日本的デジタル化の落とし穴

データ経済圏の主役、プラットフォーム企業の価値と未来(前編) 最終回 筑波大学・立本教授、楽天・河野常務執行役員、LINE・藤井執行役員、アクセンチュア・木原氏による座談会

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古嶋 日本の電機・電子産業でも、コングロマリット(複合企業)化によって、総合電機メーカーが生まれましたが、市場の評価がなかなか上がりませんでした。一方、サムスンやアップルのように、特定の製品・サービスが市場で突出して強い企業は、時価総額が急増しました。

立本 事業を複合化した場合、シナジー(プラスの効果)を生むのか、ディスカウント(マイナスの効果)を生むのかというテーマは学問的にアメリカで1980年代に議論されました。結論は、プラスの面とマイナスの面が両方あり、そのどちらが大きくなるのかは、経営陣のマネジメント力次第というものです。残念ながら日本の電機・電子産業ではディスカウントの側面が大きく、リストラクチャリングを進めざるを得なくなっていますが、本来はシナジーを生む可能性も持っています。

河野 昔は複数の事業を複合化させてシナジーを生む手段が限られていました。それに対して現在は「データ」を活用して一気に複数の事業を結ぶことができるようになっています。これは大きな違いでしょう。

立本 ご指摘のように「データ」の活用は大きな違いです。昔のコングロマリットでは、シナジーを高める事業複合化の手段は金融ぐらいしかありませんでしたから。

プラットフォーム企業はデータを軸にしたコングロマリットへ

古嶋 LINEさんは急成長しているメッセージングサービスをベースに、多くのサービスを増やされていますが、どのような狙いがあるのでしょうか?

藤井 弊社はプラットフォーム企業として「AI(人工知能)」「フィンテック」「コマース」という、3つの軸で戦略事業を推進していますが、出発点はスマホアプリのメッセージサービスで、その強みを生かして事業を拡大します。コーポレートミッションが「CLOSING THE DISTANCE」である通り、「人と人、サービスや企業との距離を近づける」ことを通じて、プラットフォームを完成させることを最も重視しています。

古嶋 事業を複合化していく際にLINEさんが差別化できる点は何だとお考えですか?

藤井 お客様の情報を複合的に活用できる点は大きな強みでしょう。私が担当する「コマース」を例にすると、弊社はスマホアプリでサービスを提供するため、ユーザーの了解のもと、スマホの位置データを習得し、「検索×位置」といったデータに加工して活用することができます。

 例えば、「LINEデリマ」というサービスでは、現在は第1フェーズでオンラインデリバリー(ネット注文による出前)を提供していますが、既に明らかにしているように第2フェーズでユーザーが事前にネット注文をして飲食店に食事を取りにいくテイクアウトサービスを提供する予定です。これを実現するには、ユーザーや店舗の位置と店舗検索のデータを結び付ける必要がありますので、実現できる企業はかなり限られます。

古嶋 一方、楽天さんは多数のサービス人々の暮らしをあらゆる側面から支えています。そこから生まれる膨大なデータをどう活用されていきますか?

河野 データの精度、深さと幅はかなり重視しており、これからも追求していきます。70以上のサービスがなぜ必要かというと、それぞれのサービスで異なるデータが取得できることが理由の一つです。例えば、ECサービスではオンラインの購買動向データが取得できますが、クレジットカード事業では、オフラインの店舗における購買動向を含めたデータが取得できます。また、電子マネー「楽天Edy(エディ)」のサービスでは、コンビニにおける数百円単位の購買動向データが得られ、「楽天スーパーポイント」のサービスでは、パートナー企業における購買動向データがオンラインとオフラインにわたり取得できます。楽天グループではこうした多面的なデータを、楽天IDを軸につないで消費者単位の行動を分析することができるのです。最近、オンラインとオフラインのサービスは境界線が次第に曖昧になっていますので、こうした総合的なデータ活用は、楽天グループの強みをさらに大きくする上で今後もより重要になってきます。

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