泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

激変する自転車部品業界でシマノを襲う二つの波 テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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世界の自転車販売を左右し始めたシェアバイク

 もう一つの「ユーザーの自転車利用動向の変化」の影響も大きい。これは自転車をスマホの操作などで簡単に借りられるシェアリングサービスの台頭である。海外では「バイク」という言葉が自転車を指すので「シェアバイク」とも言われる。

 実は、シマノが発表した決算資料のコメントで株式市場が大きく反応する出来事があった。2017年12月期の第2四半期決算の決算短信で同社が中国での事業環境を次のように説明したときだ。

 「中国市場では、急激に成長したシェアバイクの影響を受け、2015年から続いた完成車の店頭販売の不振回復に水を差しました。特に低価格帯の店頭販売は伸び悩みましたが、市場在庫は適正なレベルで推移しました」[4]

 この決算発表の翌日は業績の下方修正も相まって、同社の株価が大きく下落した。今振り返ってみればシェアバイクの脅威を改めて確認させられたイベントといってもよいであろう。

 自転車部品メーカーからすれば、シェアバイクの普及によって自転車がより多く売れ、それらに搭載される部品もそれだけ売れるという構造が理想的だ。

 しかし、自転車をシェアリングすることが主流となれば、既に自転車が普及している国・地域の場合は特にそうだが、販売台数が伸び続けることが難しくなると考えるのが自然であろう。

 三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司 中国投資銀行部 中国調査室の調査によれば、中国における自転車の年間生産台数は2016年に5400万台にのぼる一方、2017年(予想)のシェアバイクサービス登録ユーザーは740万人程度だ[5]。これを一部とみるか、もしくはもうこんな水準にまで来ているのかとみるかは今後のシェアバイク市場の伸び率次第であるが、中国における自転車の年間生産台数は、2016年を起点とする過去5年においては、2014年の6200万台をピークに下落している。

 ここで世界の自転車メーカーの株価も見ておきたい。

 下図は、台湾の自転車メーカー大手であるジャイアント、メリダ、そしてシマノの株価を2011年12月末を100として、その後の推移を見たものである。3社いずれも2014年までは好調に上昇し、その後、シマノは横ばい、ジャイアントとメリダは下落傾向にある。

 先ほど中国でシェアバイクが普及しつつある点を指摘したが、中国における最初のシェアリングが北京大学で始まったのは2014年だ。同大学の学生であった戴威氏がキャンパス内移動の利便化を図るためOFO(オフォ)を設立した[5]。2014年というタイミングを考えれば、その影響を株式市場が憂慮しているとも見えなくはない。利用者の行動変化、つまり、所有からシェアに変わるときにこれまでハードウエアを提供してきたサプライヤーにも変化が起きるということである。

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