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「本能寺の変」のフェイクニュースに惑わされる人々 呉座勇一・国際日本文化研究センター助教に聞く

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 「しかし朝廷黒幕論は現在では説得力を失っています。信長の経済的援助で危機に瀕(ひん)していた朝廷の財政状況は劇的に改善されました。実際はスポンサーである信長の歓心を買うことに朝廷は必死だったのです」

 「中世において天皇は高齢になる前に譲位するのが一般的であり、正親町天皇も譲位を望んでいました。なかなか実現しなかったのは儀式費用の調達が困難だったためです。四方に強敵を持つ信長は朝廷再興に専念できませんでした」

イエズス会説や将軍義昭説まで登場

 ――宣教師を日本へ派遣していたカトリック教会のイエズス会が黒幕だったという説もありました。

 「イエズス会が信長を軍事的、経済的に支援し、信長も南蛮寺などを保護した。しかし晩年に自己神格化するなどイエズス会からの自立を図った信長を光秀に討たせ、さらに羽柴(豊臣)秀吉に光秀を討たせたという仮説です」

 「しかしイエズス会が信長を援助したという史料が日本側、イエズス会側双方に存在しません。むしろ最新の研究によれば、イエズス会日本支部の財政は逼迫していました」

 ――国立大学の現役教授が唱えた「足利将軍黒幕論」は相当な説得力があり、一般の関心も大きかったと思います。

 「信長に追放された15代将軍・足利義昭が毛利輝元、上杉景勝ら有力大名による信長包囲網を形成し、光秀にクーデターに踏み切らせたというものです。光秀が単独で謀反を起こすのは無謀すぎるといった後世の疑問に応え、上杉に本能寺の変を事前通告したとも解釈できる第一次史料も発掘して、自説を展開しました」

 「ただ一次史料の読み方に問題がありました。足利義昭も、当時は各大名に指示を与えられるほどの権勢を失っていました。事前同盟に意味があるのは共同作戦を行うときだけです。諸大名が一斉に織田領に侵攻できない以上、光秀に共同謀議のメリットが乏しく、事前に秘密が漏洩する危険性が高まるだけです」

 「本能寺の変後、毛利は羽柴と和睦しています。上杉も柴田勝家ら北陸方面軍を避け北信濃に進出しました。事前協議してこの事態に陥ったならば、光秀はとんでもない愚か者ということになります」

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