日本的デジタル化の落とし穴

ブロックチェーンがもたらす次の破壊と創造 第6回 日本銀行・副島豊、gumi・國光宏尚、アクセンチュア・高橋良之の3氏による鼎談

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國光 第2~3世代のブロックチェーン活用では、トークンを発行する意味付けが重要になります。例えば僕らが投資している「シータ(THETA)」という動画配信のP2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークを提供する会社では、ネットワークに参加すると報酬としてトークンが得られるようにしています。

 シータは、仮想現実(VR)版の動画投稿・eスポーツ配信プラットフォームを、クラウドサービスをベースに実現しているのですが、将来、4K/8Kといったように動画の解像度が上がり、さらにフルVRになったら、今の100倍もの通信容量が必要になります。対策として考えたのが一般ユーザーのパソコンやスマートフォンの空いている通信帯域を共有して大量のデータをやりとりするP2Pネットワークです。これは技術的には確立していますが、これまであまりうまく機能してきませんでした。誰も無償では他人にネットワークを貸したがらないものです。そこでシータでは、ネットワークに参加するとビットコインのマイニングと同じように、トークンがもらえるというインセンティブを付けることで自律性を確保しています。多くの人たちのパソコンやスマートフォンの通信回線にはたいてい余裕があるのでパソコンやスマートフォンを立ち上げたままにしておくだけでトークンが入手できる仕組みです。

副島 ビットコインなどではプルーフオブワークとして台帳の正当さの監視・検証に関する計算を行います。その際、仮想通貨で金銭的な報酬を提供しつつ、かつ仮想通貨の発行量を一定ペースにコントロールするために、計算内容を徐々に難しくしています。その結果、計算能力の向上がより大きな計算資源を求めるという困ったループが発生しています。その一例ですが、計算資源に膨大な電力がかかるようになって社会的に無駄が出ているのは課題でしょう。

 伝統的な決済インフラの運営者としては、直感的にはコンソーシアム型のほうに慣れ親しみを感じます。台帳の正当さの監視・更新をコンソーシアム参加者全員の義務にすれば、プルーフオブワークやその報酬は不要となります。もちろん、義務を果たすインセンティブとして、コンソーシアムの参加者が何らかの形でメリットを得られることが前提となります。

 それでも台帳に記録されたデータの価値はトラストレスのままです。プルーフオブワークでマイナーがこれだけのコストをかけて計算したのだから、あるいはコンソーシアムの運営コストがこれぐらい掛かっているから、仮想通貨の価値はいくらであるべきだといったことは言えません。売る人が多ければどこまでも価値は下がりますし、買いたい人が多ければとんでもなく価値は上がります。お金であれポイントであれ、普通はモノやサービスに交換した時の使用価値がアンカーとなります。例えばペットボトル500ミリリットルの飲み物はだいたい百数十円という共通認識があるからこそ、百円の価値はペットボトル1本分弱だよねという読み替えができるのです。交換できることと、交換レートが比較的安定していることが、モノとお金のリンクを生み出します。ハイパーインフレの世界では、交換レートの安定性が失われるので、お金はその機能を失い、金融サービスが劣化して経済に著しい悪影響が発生してしまうのです。

國光 その価値のところはこれから重要になると思います。第1世代の活用では実利用が伴わないため――ビットコインは価値の保存という意味では金(きん)と多少似ていますが――価値の下支えは難しいでしょう。一方、シータのP2Pネットワークだと、サービスの基盤として使っているクラウドサービス事業者に払うコストが減るという実利があり、それが価値として認められると考えています。今までは、クラウドサービス事業者に集中していたお金が、ネットワークに貢献している一般の人々にトークンという形で少しずつ行き渡るようになります。そうなれば、おそらくトークンの価値は上がるでしょう。つまり、サービス利用者にどれくらい還元できるかがカギを握ると思います。

 また、トークンはデジタルデータなので、基本的にその交換にミディエーター(仲介者)が入って、手数料を取る意味はほとんどないと思っています。FIAT(法定貨幣)から仮想通貨へ、仮想通貨からFIAT(法定貨幣)への取引は政府が管理する中央集権的な方法のままかもしれませんが、仮想通貨と仮想通貨の交換はDEX(分散型取引所)でできる未来がくるでしょう。

 プルーフオブワークに電力やマシンパワーがかかりすぎるのも今だけの問題だと思います。しょせんはコンピュータで計算しているだけなので、世界中のコンピューターパワーをP2Pで提供し合えば十分賄えると思いますし、リソースを提供するとトークンが入ってくるといった仕組みが取り入れられれば、普及も速いと思います。

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