日本的デジタル化の落とし穴

ブロックチェーンがもたらす次の破壊と創造 第6回 日本銀行・副島豊、gumi・國光宏尚、アクセンチュア・高橋良之の3氏による鼎談

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 それに対して、ビットコインは単なるデジタルデータに過ぎないものに法定通貨と交換できるような価値が生まれました。ブロックチェーンはネット上の取引台帳が極めて改ざんされにくいという特徴がよく知られていますが、僕はそれ以上に複製が困難という点に注目しています。つまり、デジタルデータは、複製されなくなって、トレーダブルになったので資産性を持った、つまりデータそのものが価値を持つようになったと考えており、これはとても興味深いことです。

 例えば今、僕らが作っているゲームのキャラクターには資産性がないため、キャラクターを買うことはできますが、ゲームの中でしか使えません。しかし、すべてのキャラクターがブロックチェーンの仕組みの上にのったら資産性を持つ可能性があります。昔、セカンドライフという仮想空間ゲームがありましたが、セカンドライフにおける仮想的な土地や建物がブロックチェーンの仕組みにのれば、唯一性をもち、価値、資産性を持つでしょう。また、最近のMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロールプレイングゲーム)のような大勢が同時に参加するゲームの中の武器や鎧(よろい)がブロックチェーン上にのれば、これらも資産性を持つようになると思います。

ブロックチェーンの活用は第2世代、検証や実験が続々実施される

高橋 今のブロックチェーン技術はどのような活用ができる段階にありますか?

國光 ブロックチェーンの活用は今、第2世代に入っており、これから第3世代に入りつつあると考えています。第1世代はビットコインに代表される仮想通貨としての活用です。その次に出てきたのが契約の自動化を実現するスマートコントラクトのプラットフォームとしての活用で「イーサリアム」が代表的です。第3世代は先ほど述べたブロックチェーンならではの特徴を生かした新しい製品・サービスでの活用で、それが現れ始めているところだと思います。第1世代は通貨としての活用ですので決済で使えないものには意味がないという結論になりますが、第2世代になると、イーサリアムというプラットフォーム上でサービスを動かすとき、イーサという仮想通貨が利用料としてかかりますので、イーサという仮想通貨に決済機能ではない明確な用途が生まれます。

副島 第2~3世代の活用は、実際に金融機関やビジネスでブロックチェーンを使っていく段階が含まれるかもしれませんね。土地や証券を売買すると登記が必要になりますが、それは台帳の更新です。例えば、証券は、証券保管振替機構(通称「ほふり」)でこの株式や債券は誰がいくら持っているというのを全部記帳して保管しています。また、取引がその台帳に反映される以前に、取引内容の確認を行う約定照合という作業があります。これにDLTが活用できないかというのを日本取引所グループさんが証券会社と一緒に検討され、報告書も出されています。ほかにも貿易金融など紙による処理で時間と手間がかかっていた業務にDLTを応用し効率化・高速化を進めようという試みや、食品のトレーサビリティー向上にDLTを活用する試みもあります。あらゆる業種の様々な業務が台帳ベースで動いています。それをより効率的でコスト安なものに置き換えよう、新たに導入しようという動きであり、大きな可能性を感じています。

 金融機関における検証や実験などは既に多数あります。一方で、PoC(実証実験)で実際に実装してみてわかった限界もあります。先ほど紹介した日銀ネットの実験のファーストプロジェクトでは、参加者を限定したコンソーシアム型のDLTを用いました。日銀ネット参加先すべてが台帳を保持するのが理想形ですが、当時のバージョンでは台帳を持てるノード数が不足していました。また、スピードの上限が課題になる事例もあると聞きます。もっとも、DLTの技術進歩は著しく、スケーラビリティーなどの課題は日進月歩で次々に改善されています。

高橋 金融機関は既に安定稼働して実績がある仕組みを、なぜブロックチェーンで置き換えるのでしょうか?

副島 金融市場と対比させてみましょう。金融市場では、証券取引所のように注文を集中させて取引を成立させたほうがよいのか、あるいは外国為替市場や債券市場のように相対型で分散化された市場が望ましいのか、画一的な答えはありません。しかし、決済システムというものは集中させた方が圧倒的に効率がよく、中央集中センターをつくり、そこをしっかり運営するというのが伝統的な考えでした。というか、それ以外はありえないだろうというのが常識だったわけです。だから、DLTが登場したときは、ものすごい驚きがありました。

 ただ、この中央集権的なシステムの運営にはコストがかかりますし、機能を拡張したり、後で手を入れて変更したりしていくことが苦手です。それが、DLTを使ったシステムだと初期コスト、ランニングコストともに大幅に減らせるという期待があります。また、システムに変更を加えていくことも、いまより容易になるでしょう。もう一つ、台帳が分散保有されているのでITシステムが機能不全になるようなショックに対して強みを持っている点もメリットでしょう。集中型だと万一そこが動かなくなった場合、すべてが止まってしまいます。もちろん、今の仕組みでも二重化やバックアップセンターなどの対策はしていますが、バックアップセンターも停止したらシステムは機能しなくなります。DLTの場合、ノードの一部が止まってもネットワークは動き続けます。日銀のDLTの実験結果は、今すぐ伝統的な決済ITシステムを置き換えるものではないというものでした。それでも、上述のようなメリットとの比較考慮は今後も続けていくと思います。

第2~3世代の活用ではトークンを発行する意味付けが重要

高橋 ブロックチェーンの特徴として先ほど、トラストレス、自律的、ディセントラライゼーションが挙がっていましたが、自律的という点はトークンをどのように提供するかがカギを握りそうです。ビットコインではマイニングというプルーフオブワークの報酬としてビットコインというトークンを得られるようにしたことが自律性を実現していると思います。國光さんは新しいトークンを発行するプロジェクトにいくつか投資されていますが、トークンを発行する上でどのような点に注意されていますか?

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。