東大卒棋士のAI勝負脳

藤井聡太がタイトルに挑戦する確率 将棋棋士6段・片上大輔

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 最年少棋士・藤井聡太7段(15)は竜王戦と王座戦の対局に相次いで敗れ、期待された年内のタイトル挑戦はなくなった。それでも、藤井が来年タイトル戦に登場する確率は20%くらいはありそうだ。2月に史上最年少での棋戦優勝を果たして以降も、トップ棋士との対戦を重ねる中でさらに将棋の内容が向上していることに加え、藤井自身になお自己変革しようという意思が感じられるからだ。 (日経BizGate編集部注:片上大輔氏は2018年7月に7段に昇段しました。)

■研究パートナーは「他人」よりもAI

 6月末の竜王戦で、藤井は増田康宏6段(20)と対戦した。この一戦に増田は普段あまり用いない「矢倉」の戦法で臨んだ。おそらく相手の意表を突く狙いもあっただろう。 増田は序盤の27手目、自ら矢倉囲いを放棄し一度上げた銀を下げる珍しい構想を見せ、主導権を握ることに成功した。

 あまり見かけない一手に、私は対藤井戦に向けて綿密に研究してきたと感じた。その後も終始攻勢を取り続け、藤井に反撃の機会を与えなかった。序盤に限らず常に相手より多く持ち時間を残すようにするなど、指し手だけでなく戦い方の面でも周到さと巧妙さが際立っていた。

 増田は16歳でプロデビューした、藤井の1代前の「最年少棋士」だ。師匠の森下卓9段が「羽生を超えうる素質」と認めた才能の持ち主で、14歳のときに3段に上り、藤井の前に史上5人目の中学生棋士になる可能性もあったほどだ。

 増田も藤井と同じ人工知能(AI)世代の棋士である。あまり人間(他の棋士たち)の将棋は見ることがなく、主な研究パートナーはコンピュータソフトだと聞く。AI同士が指す将棋に精通し、プロ間ではあまり評価されていない作戦にも、いち早く目をつけて自身の将棋に取り入れている。

 本局は「矢倉」というトッププロの間で古くから指されていた戦法を用いたが、内容的にはやはりAIの影響を色濃く感じさせた。実はつい最近まで増田は矢倉戦法を指さないと公言していたのだが、この変わり身の早さもAI世代ならではと感じる。加藤一二三9段が現役時代、半世紀以上もずっと「棒銀」戦法を使い続けたのとは実に対照的だ。

 6日に王座戦の準決勝で藤井と対戦した斎藤慎太郎7段(25)も14歳で3段に到達した。18歳でプロデビューした後は各棋戦で実績を積み重ね将棋界のエリートコースを歩んでいる。昨年はタイトル戦の舞台で羽生棋聖に挑んだ。藤井との公式戦初対戦に、斎藤も増田と同様に綿密な準備で臨み、藤井に一度もリードを許さなかった。

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