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「官僚の劣化」が教える3つの人事教訓

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 「課長までは横並びとか再就職の世話などかつての雇用習慣も激変しており、弱体化に拍車をかけています」

「文化系優位」の時代の終わり

 「官僚が持つ専門性や行動力などの技能や能力は、いわば政権のインフラです。しかしグローバル化が急速に進む中では、その重要性が認識されづらくなってきています。一方集団性が薄れつつある中で、個々の官僚の中にはこれまでのように自分が属する省の利益よりも、人事に大きな影響力を持つ政治家のために動こうとする傾向が強くなっています」

 ――省庁の上司よりも政治家からの評価を気にする官僚の増加が人事システム的にも予想できますね。

 「特定の政治家を個人的にも結びつき、一蓮托生(いちれんたくしょう)の行動を選択するケースは今後も増えるでしょう。官庁から派遣されてパイプ役を務めるのではなく、大臣や首相と運命を共にする秘書官などです」

 ――城山三郎氏の小説に出てくるような硬骨の官僚像は期待しにくくなってきますね。

 「以前から政治家に取り入るのがうまい官僚はいました。政治家が絡むような案件は『マルセイ』案件と呼んで、かつては30歳代の若手課長補佐が処理することもありました。しかし、どこの役所でも暗黙の了解で特定の政治家と結びつきの強い官僚は、いくら仕事が出来ても次官や有力局長に登用しないなどの暗黙の了解がありました。今後はどうなるでしょうか」

 ――官僚組織が今後も優秀な人材を獲得できるかどうかについても危惧する声が高まっています。

 「全国的に知られる関西進学校の教頭によると、一番優秀な学生は東大の理系を目指し、2番手以下の層が文系を受験するそうです。最近では日本を脱出して米MIT(マサチューセッツ工科大)などに進学するケースも増えています。かつての文化系優位が崩壊しています」

 「リーマンショック後は弁護士、金融、外資といった以前は魅力的だった就職先にも陰りが見え、文化系全体で花形職業がなくなりました。全体の地盤沈下の中で人気が官僚に回帰する皮肉な現象が起きています」

 「霞が関の官僚はすでに『政官財』と称されるパワーエリートではなく、勉強が出来て情報処理能力に優れているという知的ブランド力は維持しているものの、実態はセカンドエリートの位置づけです」

 ――日本の企業人事は幹部候補生の絞り込みなどで霞が関の人事を参考にしてきた面もあります。生かすべき教訓は何でしょうか。

 「幹部候補生のモチベーションを維持し、高めるような人事制度の改革はさまざまな側面から考える必要があります。日本の労働市場は流動性が低く官僚の世界では今も内部登用中心ですが、外部登用の大胆な採用はその1つでしょう。子会社のトップが本社へ呼び戻されるケースも緊急避難的なだけではなくシステム的に捉え直しても良いかもしれません」

 「エリートに対して厳しい仕事を課すのであれば、それに見合った処遇は重要です。官民問わず日本の組織は金銭面でそれほど報いているわけではありません。組織と個人の関係がドライになってくれば、この問題は大きくクローズアップされることになります」

 「見落としがちなのは社会との関係です。かつて行財政改革の背景には、官僚バッシングがありました。この種の激しい批判は企業にも向く可能性があります。組織内論理だけでの人材登用は危険で常に社会の目を意識しておくことが有効です」

 (聞き手は松本治人)

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