日本的デジタル化の落とし穴

AIの進化が求める人との新たな役割分担とは? 第5回 音楽家・大山平一郎、Takram・櫻井稔、アクセンチュア・保科学世、畦地直樹の4氏による座談会

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協力:アクセンチュア

 経営コンサルティング大手、アクセンチュアのコンサルタントが様々な分野のエキスパートと対談し、日本的デジタル化の要諦を探る連載シリーズ。第5回は「テクノロジーと文化の共生~テクノロジーと人の境界線~」をテーマに、クラシック音楽界の巨匠である大山平一郎氏(米サンタ・バーバラ室内管弦楽団音楽監督兼常任指揮者)、Takramの櫻井稔氏(ディレクター・デザインエンジニア)、アクセンチュアの保科学世氏(アクセンチュア・イノベーション・ハブ 東京共同統括 マネジング・ディレクター)、畦地直樹氏(通信・メディア・ハイテク本部 マネジング・ディレクター)の4氏による座談会をお届けする。

これからのAI活用では、人とのインタラクションが重要に

保科 近年、「AI(人工知能)が人を置き換える」という話題がよく取り上げられます。もちろん、AIは人の仕事を置き換えることはあっても、人そのものを置き換えることは基本的にありません。しかし、近年のAIの進化は著しくAIが想像以上に人に近づいた結果、人とAIの役割分担が改めて問われています。人の得意なところは何で、AIをはじめとする機械の得意とするところは何か――また、それぞれは役割をどう分担すべきなのかが今回のテーマで、そこにはテクノロジーと文化の深い関係があると思います。

 このようなことを考えたきっかけは、今、AIと人のインタラクションが重要になっていることです。私は、近年は特にAIに関する仕事を多く手がけていますが、データを処理する「アルゴリズム」だけではAIは真価を発揮できないと感じています。特に、膨大なデータをアルゴリズムに基づいて処理して、結果を人へ伝えるケースでは、その結果を人がどう受け止めるのか、人の感性にどう訴えるのかまでを考えるべきであり、アルゴリズムだけを高度にしても意味がありません。

 そうした問題意識をもとに今回は、これまでになく多彩なスペシャリストに参加いただきました。クラシック音楽界の巨匠である大山先生、デザインエンジニアとして活躍されているTakramの櫻井さんです。

 クラシック音楽は「時代をも超越した、芸術の域にまで高められた究極の非言語コミュニケーション」だと私は考えています。クラシック音楽は、古(いにしえ)の音楽家が様々な情景や思いを曲にし、それを歴代の演奏者が何百年も引き継いできました。非言語コミュニケーションをAIに組み込むために重要なことは何かを考える際に、これまで私に様々な気づきを与えてくださったのが、まさに大山先生です。

大山 ITの知識はほとんどありませんが、こういう場に参加させていただくに当たり、AIについて調べてきました。AIの定義は確立されていないようですが、私の視点ではAIは、ある発想に反応するもので、それ自身が発想するものではありません。AIがどれだけ高度な機械であろうと、クリエイティビティー(創造性)を発揮することが人の存在価値だと思います。今日はよろしくお願いいたします。

保科 櫻井さんはTakramのデザインエンジニアで、デザイナー目線でかつ、最新テクノロジーを活用した人とのコミュニケーションをお仕事にされています。大山先生の「音楽」に対して、櫻井さんは「ビジュアルとテクノロジー」を駆使したコミュニケーションの達人です。

櫻井 普段はビッグデータの可視化などをしているのですが、アート領域出身のテクノロジストといった立場で仕事をしています。デザインとエンジニアリングの融合に取り組む人たちの多くは、テクノロジー側からデザインにアプローチするのですが、私は珍しくデザイン側からテクノロジーに取り組んでいます。現在はTakramでディレクターとして働くかたわら、東京芸術大学の客員講師もさせていただいています。

保科 畦地さんはアクセンチュアで営業改革、デジタルマーケティング、コールセンター関連のコンサルティングをメインで担当し、最近では企業におけるAIの活用に取り組んでいます。

畦地 一昨年ぐらいからAIを活用したいというお客様の要望が増え、通信・メディア・ハイテク本部の中では私がAIを担当しています。AIを活用したビジネスについて企画からお客様への導入支援までを手がけている経験を踏まえ、AIを実際に企業に導入する、あるいはAIを利用する消費者の立場でコメントできればと思います。

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