東大卒棋士のAI勝負脳

「職業としてのプロ棋士」と就活 将棋棋士6段・片上大輔

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

長所を伸ばし短所を克服して4段

  それでもあと1勝で4段、という将棋を2局続けて負けたときは、ずっと好きで続けてきた将棋の世界が、決して自分にマッチしていたわけではないとまで考えた。人生の中で、このときほど自分の気持ちと深く向き合った瞬間というものはなかった。このままで良いのかどうか、何度も自分に問い続けた。

 当時21歳の私は、10代の後輩3段たちの振り飛車戦法に苦しめられていた。そこで振り飛車の対策を徹底的に研究することにした。また同じ振り飛車の使い手であっても、相手によって対策を変えて臨むことにした。持ち時間の使い方も見直した。時間切迫とプレッシャーからくる終盤のミスは、大きな弱点だった。さまざまな努力の甲斐あってようやくプロ四段になれたのは、東大の同級生たちが卒業するのと同時だった。

 実は30代の後半に入ったいまでも、棋士という職業とのマッチングに悩むことはある。ただ将棋は本当に面白いし、続けてきて良かったと思っているので、その点ではマッチングに成功しているとも言える。若い時期に悩んだ結果だからこそ過去の選択に後悔はないし、今の環境に自分をマッチさせようと努力もできる。

 私には一般的な就活経験はないが、将棋連盟職員の採用試験で面接官を務めたことがある。一番大きなポイントとして質問していたのは、本人が自分の長所と短所をよく理解しているかどうだった。目標を達成するための努力というものは結局のところ長所を伸ばすか、短所を埋めるかのいずれかしかない。自分と深く向き合い自分の長所と短所をよく理解してこそ、自分なりの課題解決策を見つけることができる。実は将棋でもまったく同じである。

 片上 大輔(かたがみ・だいすけ)
 将棋プロ棋士6段。
 1981年広島県出身、36歳。森信雄7段門下。東京大学法学部在籍中の2004年に4段昇段、プロ棋士としてデビュー。09年6段。13年から日本将棋連盟の理事・常務理事(17年まで)を務め、プロ棋士とコンピュータソフトとの対局「電王戦」などを担当した。また将棋界で34年ぶりの新タイトル戦「叡王戦」の創設にも携わった。14年から首都大学東京で非常勤講師を務めている。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。