AG/SUM キーパーソンに聞く

初の産業界出身理事長「農業を強い産業に育成」 農研機構 久間和生氏

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 アグリテック(農業とテクノロジーの融合)をテーマにした日本経済新聞社主催のイベント「AG/SUM(アグサム)アグリテック・サミット」(6月11~13日)に関連し、参加企業・団体のキーパーソンにアグリテックの注目点や戦略を聞いた。今回はわが国農業研究の中核機関である農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)に今年4月、産業界出身者として初の理事長に就任した久間和生氏。三菱電機の研究・事業分野で実績を残し、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議議員を務めた久間氏は、農業を強い産業に育成したいと意気込む。

「Society5.0」を農業分野に生かす

――歴史ある組織で初の民間出身理事長です。

 三菱電機では光ファイバーセンサーや光ニューロチップ、人工網膜LSI(大規模集積回路)、画像処理システムなどの研究開発と事業化を行いました。人工網膜LSIが任天堂ゲームボーイのポケットカメラや携帯電話搭載カメラに初めて活用されたことが実績としてよく紹介されます。

 三菱電機の副社長を退任後、総合科学技術会議議員、総合科学技術・イノベーション会議議員(いずれも常勤)を務め、省庁連携・産学官連携で基礎研究から実用化まで一気通貫で行う戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)や、ハイリスク・ハイインパクトの研究を行う革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の創設と推進、第5期科学技術基本計画の中で超スマート社会「Society5.0」のコンセプト構築などを行いました。

 それらを通じ、最初、自分にとって最も遠いと感じていたのが農業です。しかし、SIPの「次世代農林水産業創造技術」というプログラムにかかわり、そのマネジメントのためにいろいろと勉強しているうち、農業も工業もお客様が必要とするものを安く作ることが重要という基本は同じであると知ったことは、自信となりました。理事長就任依頼には驚きましたが、農研機構を新たな発想で大胆に変えたいという関係者の気持ちを感じ、技術開発で農業を強い産業にすることに貢献したいと思いました。

――農業とテクノロジーの関係はこれからますます重要になりそうです。

 私がコンセプトの構築を進めた「Society5.0」のシステム構造は、フィジカル空間(現実)とサイバー空間(クラウドなど)が融合したものです。フィジカル空間には、画像、音、温度などさまざまなセンサーがあり、それらの膨大なデータを(あらゆるモノがインターネットにつながる)IoTでサイバー空間とつなげ、そこで集積・解析して結果をフィジカル空間にフィードバックします。

 農業の場合、フィジカル空間でのキーテクノロジーとなるのが、バイオテクノロジー(含ゲノム編集技術)や育種・栽培技術、ロボット農機など。サイバー空間のそれは、AI技術やデータ連携基盤などです。

 「Society5.0」では、これまでのように「育種」や「生産」などを個々に考えるのではなく、育種から生産、加工・流通、消費までの全体を「スマートフードチェーン」というシステムとしてとらえ、「育種開発のスピードアップ」「人手不足の中での生産性向上」「需要と供給のマッチング」「需要拡大/輸出促進」など、プロセスごとの課題に沿ったデータを集積し、AI(人工知能)技術で解析して、その結果をシステムにフィードバックします。それをキーテクノロジーとして、生産性の向上、無駄の排除、トータルコストの削減、ニーズとシーズのマッチングなどの実現を図っていくのです。

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