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「角さんのダミ声」は認知心理学的に正しい

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 ――現在の政治家や経済人の声はどうでしょうか。

 「安倍晋三首相は年齢よりもはるかに若々しい声を出せています。高い周波数の声を咽頭の上部に当てて響かせているからです。いわば『自分の場所を持っている声』なので安定しており、信念を述べるときなどに効果的です」

 「ただ思っていることを反射的にすぐ口に出すシーンも目立ちます。一国の宰相としては、いったん脳で考え、どの話し方を選択すべきかワンクッション置いてほしいという気もします」

 「現在の国会議員でトップは石破茂氏でしょう。言葉の選び方、間の取り方、単語の際立たせ方などが申し分なく、柔らかな声には好戦的なところがうかがえません。自分自身への肯定感から発する明朗さが、相手に安心感を与えています」

 「ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、壮大なビジョン、外へ外へと向かう積極的なスピーチの中に、どこか内向きの暗さを感じさせるときがあります。発音、滑舌、話のテンポとうまいのですが。暗い声が出るのは、声帯の振動数に関係なく、できあがった声に高い周波数帯の声が少ないのです」

孫正義会長兼社長へ3つのアドバイス

 「孫氏には(1)話すときはまばたきをしない(2)眉を上げる(3)目を見開いて話す――をアドバイスしたいですね。まばたきをすると声が不安定になります。眉を上げて目を見開くと顔の上部が広がり、鼻腔(びくう)などの共鳴腔は構造上、高い周波数を共鳴させて増幅します。声が暗いからと、無理に張った声を出そうとすると、明るいというより硬質で耳障りな作り声になってしまうのでご注意を」

 ――我々一般のビジネスパーソンが魅力的な声を獲得するためには、やはりスピーチトレーニングを受けるべきなのでしょうか。

 「若手経営者の中にはスピーチトレーニングしているな、とピンとくる方が何人かいらっしゃいます。具体的にどこでトレーニングしているか分かる時もあります(笑)。外出するときに全身を鏡で見るように、自分の声の個性を知ることが第一歩です」

 ――自分の声を録音して聞くべきなのでしょうか。

 「1日に合計10~20分程度、自宅や会社でのプレゼンテーション、同僚との会話などを録音して聞いてみるのは有効です。あまり長いと自分の声でも飽きますから。わざとらしい声や暗い声も入るでしょうが、自分で気に入った声も必ず発見できるはずです。その声を記憶してほしいです」

 「日本人は対人関係の緊張度が高いとよく指摘されます。緊張していると喉の筋肉が絞まり、高く詰まった響かない声になりがちです。意識してしゃべることを心がけたいです。低めにゆっくり話すだけでも声の印象は変わってきます」

――企業社会では社内外のプレゼンの時、少人数の会議、1対1での商談と、それぞれ使い分けが必要に思いますが。

 「ビジネスシーンによって使い分けようと考えることが、日本人の声を悪くしている一因ではないでしょうか。米アップル社のスティーブ・ジョブズを思い出して下さい。多くの顧客を前にしても、世界中に新製品を発表するときでも、あたかも目の前の相手ひとりの目を見ながら伝えているような話し方でした」

(聞き手は松本治人)

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