AG/SUM キーパーソンに聞く

農家のためになるアグリテックにアプローチしたい プラネット・テーブル 菊池紳氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

――農業の深刻な課題が見えてきたのですが、反対にうまくいったことはありましたか。

 SENDで契約している大分県のトマト生産者で、息子さんが帰ってきて農家を継ぐと言ってくれたことがありました。その息子さんは農家を継ぐのを嫌がって都会のサラリーマンになったのですが、父親がSENDと契約して売り上げが伸びている、自分が生産するトマトについて「実際に需要家と会って感謝された」と喜ぶ姿を見て、心変わりしたそうです。農家の後継者難を解決することはSENDを開始する時の狙いの1つだったので、非常にうれしいケースになりました。今後も同じケースが相次いでくれることを願っています。

2極化していく食文化にビジネスチャンスがある

――プラネット・テーブルを創業した動機を改めて教えてください。

 創業前は投資ファンド会社などに勤務し、農業スタートアップに関わるとは夢にも思っていませんでした。ところが、今になって振り返るとなぜか食に関わる仕事や出来事にかかわってきました。農業に関わる直接のきっかけは、母の実家である山形県で農家をやらないかと言われたことです。そして日本の農業が抱えている複雑な問題を真剣に考えるようになりました。

 食について「将来に世界で食べ物が足りなくなる時代がやってくる」と言われていますが、ならば「足りなくならない時代をつくってみよう」と考えたのがスタートアップを始める動機であり、創業からの夢です。

 食を巡る様々な動きはこれから2極化していくように思います。食料を十分に供給するための「植物工場」がたくさんできる一方で、生産者が丹精込めてつくった食材をレストランが大事に調理し、消費者が満足して食べるということは決してなくならない。そうした食の文化が失われないように、プラネット・テーブルが活躍できる余地はまだまだあります。

――アグサムに何を期待しますか。

 ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなど農業を取り巻く環境にもITによる変革の波が押し寄せています。フィンテック(金融とテクノロジーの融合)を利用した新しい農業金融の動きも出始めています。

 ただし、農業という産業に関係するテクノロジーについては一過性に終わらない持続性が重要だと感じています。というのも、土を相手にする農産物は「これはダメだからあれを試そう」と簡単に変更できないからです。農業にとってもテクノロジーは道具です。道具ならば、それをどういう目的でどのように使用するのか。そこを冷静に見極める目が必要です。

 アグリテックのスタートアップ企業の一員として、アグサムでどんなテクノロジーが出てくるのか非常に興味があります。ただ、それによってもたらされる恩恵がきちんと農家・生産者に及ぶものでなければ、そのテクノロジーは長続きしないでしょう。農業に関する各種データから生まれる利益を、IT企業や流通企業だけのものにしないように、アグリテックに関わる全ての人たちが留意する必要があります。

 近い将来、農業の人手不足を解消するため、AIを搭載するヒト型農業ロボットが畑で稼働しているかもしれない。そうしたテクノロジーが農家に恩恵を与えるのならば、どんどん取り入れていこうと思っています。

(松藤 政司)

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、イノベーション、M&A、AI、IoT、ICT

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。