危機管理広報 エイレックス江良俊郎社長に聞く

「不祥事は必ず起きる」前提で準備がカギ 風通し悪い企業は失敗多く

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 不祥事発生後、危機の深刻さに気付かない企業は対策が後手に回り批判される。こうした失態は「わが社は大丈夫」という根拠なき自信や風通しの悪さが目立つ企業で繰り返される。「不祥事は必ず起きる」という危機感をバックに、万一の際に即座に的確な判断や対応を取れる組織は何を整えているのか。危機管理広報コンサルティングのエイレックス江良俊郎社長に聞いた。

■実効性上がる危機への準備 対応優先順位決める

(1)リスクの洗い出しと「マッピング」

 企業の危機管理体制は「うちの会社にとっての危機とは何か」を把握することから始まる。リスク要因をしっかり認識し、そのリスクが顕在化しないようにまず管理しなければならないからだ。もちろん想定されるリスク要因は、ビジネスによっても、企業規模によっても、時代によっても異なる。食品会社であれば、健康被害に至るような異物混入や食中毒を、メーカーであれば品質問題、工場事故、データ改ざんを、金融機関や情報を扱う企業では個人情報の流出やシステムトラブルといったリスク要因が心配のはずだ。

 危機の洗い出し方法としては、実際に自社で起こった過去のトラブルや事件、今起こりやすい潜在的危機を各部門で多数想定する。同業他社の不祥事も参考になる。

 しかし、出されたすべてのリスクに対して、同じようにコストと人員をかけて管理するのは不可能だ。このため、発生頻度が比較的高いと考えられ、さらに業績、レピュテーションへの影響度を評価してリスクマッピングを行い、対応の優先順位を決めていく。多くの企業はすでにガバナンスの指針を導入、コンプライアンス(法令順守)を徹底し、現場では、それぞれのリスク要因に対して、万全ともいえる未然に防ぐ施策を整えている。不正に対しても、内部通報制度などで情報を集め、早期に危機の芽を摘む努力がある。

 しかし、それでも危機は起こる。万一の際は、すべての危機に対して迅速に的確に対応できる体制を整えておきたい。特に管理職、経営層は危機意識を高く持ち、危機の兆候を事前に察知して早い段階で対応できる平時からの心構えと準備が求められる。

■新たなリスクへの対応

 労務コンプライアンスの問題は、大きな不祥事に発展しかねない新たなリスクといえる。たとえ、社員の働きを鼓舞する時でも許容されない言葉もある。「死ぬ気で働け」という言葉で発破を掛けることも認められなくなっている。16年秋に発覚した電通問題以降、このような発言は長時間労働を助長すると受け止められるからだ。社会問題化するような大きな危機ではないが、注意したい新たなリスクもある。

 ソーシャルメディアにおける様々な「炎上」に加え、不適切な広告表現がネット上などで「炎上」するケースもある。特にジェンダー(性差)やポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい用語の使用)を巡って不快感を与える話題を選んだり、差別的な表現をしたりすると反発が大きい。昨年放映された大手化粧品会社のCMで、男性上司が女性の部下に「それ(頑張っている)が顔に出ているうちはプロじゃない」というシーンが、問題視され中止された。社会が多様性を尊ぶ方向に進む中、旧態依然とした男性中心の価値観を引きずる企業は要注意だ。

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