危機管理広報 エイレックス江良俊郎社長に聞く

謝罪会見「絶対ダメ」なあの言葉 必ず問われるトップの認識

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■誤解があれば早めに解く努力を

 重大事であるとの認識を持ち、最悪な事態も想定する。謝罪を示す上で、オープンな姿勢と何を反省しているのかが伝わる言葉づかいを心がけなければならない。詳しい状況や経緯が調査中で答えられない場合は、正直にそう言うべきだが、隠したりごまかしたりすることはしない。できる限り分かっていることは話したいという開示姿勢を感じさせる必要がある。

 「調査中」「答えられない」は何度も繰り返すと不信感を与えるフレーズだ。ある謝罪会見で「マニュアルはなかったのか」という質問に対し工場長が「調査中」と答えたケースがあった。明らかに虚偽、もしくはその程度のことすら把握できていないのかとの印象を与える。即答できないのであれば、いつになれば調査が終わり答えられるのか、目度だけでも伝えるべきだ。トップが説明責任を理解していない、取材拒否の組織は、日大の事例を見るまでもなく最も批判されることになるからだ。

 一方、不祥事の経緯や内容について報道陣が勘違いしている場合もある。日大危険タックル問題で反則をした選手への指示に使われた「(相手の選手を)つぶせ」という言葉自体はアメリカンフットボールのチーム内の会話としてありふれていたことが、その後の報道などで明らかになった。大手企業の品質不正で注目を集めた、要求水準に満たない品質でも出荷する「トクサイ(特別採用)」も顧客企業の了解さえあれば問題ない慣行だ。言葉が一人歩きするなどして生じた誤解を解く丁寧な説明は必要だ。

 日大の問題でタックルした選手は、監督から精神的に追い詰められ断れない状況だったと関東学生連盟は事実認定している。そうだとすれば、パワハラという点では選手が「被害者」ともいえる。しかし、選手の会見では、一切被害者意識を出さなかった。みじんも感じなかった。会見の前まで、あの危険なタックル行為の動画がネット上で拡散し、すさまじいバッシングが選手に浴びせられ、様々な汚名を着せられていた。ここで、選手の記者会見の質疑応答を一部抜粋したい。

 記者「ご自身にとって、内田監督の存在とはどういうものなんでしょうか。そしてコーチの存在というのはどういうものでしょうか。今回の一件を通してその見え方に変化はあったでしょうか。最後にもう1つ。今、監督やコーチに伝えたいことはありますでしょうか」

 選手「…先ほども話した通り、いくら監督、コーチからの指示があったとはいえ、僕がやってしまったことについては変わらないと思っていて、とても反省しています。監督、コーチに対して僕がどうこう言うことではないのかなっていうふうに思っています」

記者「ご自身の、その部内での在り方について、監督の存在というものはどういうものだったか、教えてください」

選手「日本代表に行くなって言われた時もそうですし、『なぜですか』とかいう意見を言えるような感じではなかったと」

記者「今伝えたいことありますか」

選手「僕の方から伝えたいことはないです」

記者「去年の甲子園ボウルで素晴らしい活躍を見せてくれたあなたが、こういうことにならなければならなかった。どこで判断を、自分としては誤ってしまったんだろうと思われますか」

選手「この試合があった週、1週間を通してですけども、監督、コーチ陣からのプレッシャーがあったにしろ、プレーに及ぶ前に、自分で正常な判断をすべきだったなと思います」

 不祥事を起こした際のスタンス、出席者の認識、軸をどこに置けばいいのか、謝罪会見の際のお手本として、この学生に教えられることは多い。結果として、汚名は返上でき、名誉も回復したのだと思う。

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