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地方創生は住みやすい都市から DBJグリーンインフラ研究会座長 福岡孝則氏に聞く

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■「リバブルシティ」が競争力のある街に

――海外の都市の取り組みを教えて下さい。

 「グリーンインフラ整備の目標は、成熟し多くの課題を抱える都市のリバビリティ(住みやすさ)を向上させること。住環境が改善し模範となる都市をリバブルシティと呼ぶ。注目され始めたのは1990年代で、米国などで大都市中心部の空洞化が問題化した頃だ。成功させるには、再開発による住宅供給の収入で費用を賄うなど、税収以外の財源を確保すべきだ。今までの公共事業との違いを打ち出す。私は以前からリバブルシティに関するシンポジウム企画運営に関わり、公共空間のあり方を議論してきた。多様な職種の方々が参加しており、問題として幅広く認識されていると実感している」

 「リバブルシティの評価では、英エコノミスト誌や海外のコンサルティング会社が集計する、住みやすい街のグローバルランキングが参考になる。経済力だけでなく生活の質でも評価。最近の各種ランキングは東京の順位が上昇する傾向だ。東京だけでなく、日本各地の都市のコンパクトさや自然と一体化した個性は、世界的に評価が高まる可能性がある」

 「日本ならではの魅力は公園など屋外公共空間で子供たちだけでも遊べる安全さだ。日本にいると当たり前のことに感じるかもしれないが、米国やオーストラリアでは自然豊かな公共空間があっても、子供だけの利用に制限が多い。日本の地方都市は屋外公共空間の質を高めることに着目して欲しい」

 「リバブルシティは訪日外国人客(インバウンド)にとっても魅力的だ。一通りの日本観光を経験した外国人観光客が最終的に求めるのは、その街にしかない景観や体験だ。地域に長期間滞在するリピーター客を呼び込むには、都市の中の自然環境も競争力になる」

 「参考になるのがオーストラリアのメルボルン市だ。見た目も美しい街路樹が日陰をつくり、夏場は暑さをしのぎやすい。レーンウエー(裏通り)と呼ばれる細い路地にオープンテラスのカフェが並ぶ。テーブルを出して営業できるよう道路規制を緩和した。中心部は路面電車を無料にし、観光客の回遊性を高めた。安心して散歩でき、公共空間に緑があふれる。住民だけでなく観光客の満足度も高い」

――暮らしや働き方にどのような変化が起きますか。

 「リバブルシティは働き方にも変化をもたらす。オフィスビルの一角や内部に共有スペースを増やせば、外部の人材とのコラボレーションの機会が増え、新たなビジネスのアイデアが生まれやすくなる」

 「防災の新たな動きとも合致する。気候変動の結果、ゲリラ豪雨などから都市を完璧に守ることはもはや不可能。豪雨のパワーをいなして被害を最小限に抑える減災の発想が求められる。雨水を一時貯水する地下施設などコンクリート製のハード(設備)だけに頼ることはできない」

 「東京都世田谷区が近く策定する新たな豪雨対策は、多摩川など主要河川の流域対策として、緑地やオープンスペース、保水を重視したプランとなる。日本の防災はリスク設定に対し、目に見える対策を求めがちだった。また公的助成を出した後、正しく使われているのかという効果の検証が手薄だ。雨の降り方が変化している現代に適した対策への転換が必要。地域住民が生活の豊かさと安全を実感できる街づくりが今こそ求められる」

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