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今からでも分かる「朝鮮戦争」の5冊

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■誤算の連鎖だった朝鮮戦争

 休戦交渉は51年6月に始まった。しかし実際に締結されたのは、その2年後だった。日本への影響として著者は「歴史的にみて常に対外最重要地域だった、朝鮮半島への戦略的関心を失ってしまったこと」を挙げる。その後はアジア戦略の中で米国が肩代わりすることになったからだ。一方で著者は「朝鮮半島の安定は我が国の平和につながる。万が一異常な事態がおきた時にどう対応すべきかは今日的な問題だ」と結んでいる。

 米国から見た朝鮮戦争を描いたのが「ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争」(D・ハルバースタム著、文春文庫、上下各1067円)。書名の「最も寒い冬」は1950年冬を指す。マッカーサー国連軍司令官の仁川上陸作戦が成功し、間もなく勝利して戦争が終結するという期待が膨らんでいたさなかに、中国が大部隊で参戦。戦況は逆転した。国連軍は半島北部の凍土の中で苦戦を余儀なくされた。

 著者はベトナム戦争の内幕を描いた名著「ベスト&ブライテスト」で知られる米ジャーナリスト。本作が遺作となった。ハルバースタムは朝鮮戦争が誤算の連鎖だったことを指摘する。スターリンが北朝鮮の南進計画を容認したのは、米国が介入しないと読んだからだった。一方で国連軍は中国が参戦しないと確信していた。米トルーマン政権は削減したままの軍事予算でも十分対応できると過信した。米軍兵士はクリスマス前に帰国できると、夏服しか支給されていなかったという。この寒さが米軍にとって最強の敵となった。

 千ページを越す本書には、トルーマン大統領ら多くの人物が登場するが、主人公はマッカーサー元帥だろう。自身を神がかり的に信じ込み、人種的に敵を軽蔑し、自国の政治家や大統領まで軽んじていた。著者が元兵士らへのインタビューを積み重ねて描写した戦闘シーンは、誤算を重ねたマッカーサーが部下に強いたものだった。

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