長島聡の「和ノベーションで行こう!」

布地の超小型車で地方の移動にイノベーションを 第16回 伊藤慎介リモノ代表取締役社長に聞く

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移動できる楽しさ・うれしさを実現する

長島 移動が増えるということが本当に大事だと思います。移動が増えないで移動の単価が安くなると、将来は経済が行き詰まってしまうはずです。移動を増やすためには、乗って楽しいというか、クルマを着せ替えしてお出かけするとか、あの人に会いに行きたいなど、楽しみを増やす工夫が必要だと思います。

伊藤 その点では自動車よりも鉄道の世界の方が進んでいると感じます。もはや速さだけで競争するのでなく、「ななつ星in九州」のようにローカル列車をベースに旅を楽しむスタイルの商品の提案が増えています。移動するということをより柔軟にとらえて、食事や形式などのサービスコンテンツを乗せるというのが斬新だと思います。また、モビリティーにサービスコンテンツを乗せるという意味では、スイスで進めている「スイス・モビリティ」が注目に値します。鉄道やバスだけでなく、ハイキングとかトレッキングとかサイクリングとか、自分自身が動くものも含めて全てをモビリティーと捉えて、無駄がないようシームレスに観光できる仕組みを構築しているそうです。それが観光需要の増加に結びついているとのことですので、大いに日本も参考にすべき取り組みかと思います。

長島 自動車メーカーも鉄道に比べると、移動そのものに着目する度合いが低いのかもしれません。全地球測位システム(GPS)などを使って道路の稼働率を表して、ここの道路は混んでいるけど、こっちは空いているから魅力的な風景や目的地の提案とともに誘導しよう、みたいな取り組みがあったら面白いなと思います。

伊藤 いいですね。自動車産業自身がもっとそういうことを考えるようになっていけば、新しいビジネスの可能性も出てくると思います。

 必要な用事のための移動だけではあまり人間は幸せになれないと思います。友達に会うとか、さほど緊急性はない用事だけど大事、といったことがすごくQOLに影響すると思います。行政は最低限の移動の必要性だけに注目し、自動車メーカーは「Fun to drive」と運転する楽しみばかりをアピールしますが、運転の楽しさよりも、自分の意志で自由に移動できること、それによってどうでもいいことも含めて「あらゆることが自分の力でできること」が重要なのだと思います。

 世界ではローカルモデルの競争が起きています。シンガポール、パリ、ロンドン、ウィーン、ヘルシンキ、サンフランシスコなどでは新しい都市交通のあり方やそれを実現するための規制、サービス、ハードウエア、インフラなどを導入する社会実験が次々と行われており、成功したモデルを他国や他都市に「輸出する」というスマートシティー(環境配慮型都市)の競争時代に入っています。日本はまだまだ中央集権的な色が強すぎて、世界のローカルモデルの競争に入り込めていません。

 個人的には霞が関の官僚はもっと地方にコミットすべきと思います。霞が関の役人を含めて都会や海外で活躍してきた人が、地方に行きその現状を知って現地のニーズに合った運営方法に挑戦し、逆に中央に対して全国レベルで取り組むべきだと提案する。そういうことが行われるようになって初めて地方の面白さが引き出され、地方発のイノベーションが起きるのだと思います。

国直轄の「天領地」で実証実験したい

長島 ローカルの人々の思いを大切にしつつ、国や地方がたたき台を出して引っ張って、両方がうまくかみ合い始めるといいですね。リモノのクルマは2020年を目標に過疎地域で低速で自動運転させるやり方なら、需要が見込めるのでは。

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