AG/SUM キーパーソンに聞く

デジタルアグリインフラの構築目指す NTT(日本電信電話) 久住嘉和氏

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新しい「農業ITビジネス」のモデルづくりに着手

――NTTグループの農業への取り組みは現在、どの段階にあるのでしょうか。

 事業化に着手して1年目は現状と課題の把握、2~3年目は外部のパートナーとの連携強化とグループ内部の連携に費やしました。NTTグループが単独で農業ビジネスをできるわけはありません。全国のJAや種苗、農機、農薬メーカーなど様々な企業や団体とパートナー連携を進めています。

 一方、内部ではNTT東日本・西日本、NTTドコモ、NTTデータなどグループ約30社と連携しています。水田や畑、ハウスなどのセンシングシステムや農作業を支援するデータ管理システム、畜産分野ではIoT(あらゆるものがネットにつながる技術)を使った牛の繁殖・肥育管理など、農業のあらゆるシーンをデジタル化した「デジタルファーム」を目指しています。外部と内部の連携が整ったことで、農業ビジネスのベースはかなり固まってきました。

 4年目に当たる昨年は、ICTを使った農業生産と流通、販売・消費をつなぐ「デジタルフードバリューチェーン」の検討を進め、パートナー連携を徐々に始めました。5年目に入った現在、当初は五里霧中だったNTTの農業ビジネスがようやく目に見える形になってきました。秋口にはデジタルフードバリューチェーンに関する具体的な取り組みを一部地域で始めます。来年度はこれを全国規模に広げる計画です。

――ICTによる農業ビジネスの姿がようやく見えてきました。将来はどう展開するのでしょうか。

 NTTには10以上の研究所があり、そこでは人工知能(AI)をはじめとする先端技術の研究を行っています。これらを農業に利用すれば、生産予測やマーケット動向予測も可能になるかもしれません。

 とりわけ、生産面で言えば、NTTのデジタルファームにより、新規参入者でも一定品質・量の作物を安定的に作ることができるのが目標です。現在の農業の大きな課題の1つが後継者難ですが、経験や勘に頼らず、データを基にした農業生産の仕組みを構築すれば、その仕組みを使って、国内のみならず、海外にもスケールアウトできると考えています。メードインジャパンよりメードバイジャパンとして、著作物単品の輸出に加え、ICTシステム全体を輸出することができます。そうなれば、就業したいという若者がどんどん増えてくるでしょう。

 流通面では生産者と消費者をつなぐデジタルフードバリューチェーンの構築により、販売面での安定化も目指します。売り手と買い手をICTで結ぶ高度な仕組みになれば、農産物の価格と需給の安定につながります。そこにICTが得意な金融の決済機能(フィンテック)や保険機能を付加していく。こうした新しい農業のビジネスモデルをつくることを目指します。

アグサムで新たなパートナーを発掘したい

――NTTグループ企業の力を結集できれば、さらに大きなビジネスにつながっていきそうです。

 グループ内には、脈々と築いてきたインフラ、アセット、およびサービスがあります。例えば、気象や地図データを扱う会社もあります。NTTデータグループのハレックス(東京・品川)は1キロメートル四方の単位の天候予測を30分間隔で更新するデータを提供できます。NTT空間情報(東京・台東)には、中山間地域でも詳細な地図情報があります。こうしたデータを農業向けに利用すれば、生産力はアップします。

 日本の農業は、既存農家の代替わりが進む今後5年間で大きく変わっていくと思います。それまでにNTTグループはICTを駆使したデジタルファーム、およびデジタルフードバリューチェーンの仕組みの構築を目指します。

――アグサムに期待するものは何ですか。

 NTTグループは、外部と連携する「オープンイノベーション」「オープンコラボレーション」を積極的に進めます。実際の農業生産のノウハウなど農業分野でNTTが持っていない部分は多いですが、時間をパートナーで補うことができます。分野や規模は問いません。「本気で農業を変えていきたい」という人ならば、個人でもいいのです。アグサムでそのようなパートナーと出会えることを切に願っています。

(松藤 政司)

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、イノベーション、M&A、AI、IoT、ICT

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