東大卒棋士のAI勝負脳

藤井聡太の活躍を支える「マッチング」 将棋棋士6段・片上大輔

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 では「好き」と「得意」が一致すればそれで十分かというとそうではない。これに加えて「時代に合っている」という要素が必要で、特に現代においては一番重要だと考えている。 いくら自分が独自の研究で剣を磨いても、その剣を試す機会がなくては役に立たない。良いサービスを生み出しても使ってもらえないことには意味がないのと同じことである。プロ将棋界における流行戦法は、いわば売れ筋商品のようなもの。顧客が多く存在する市場で勝負することは、どんなジャンルにおいても急所の1手だろう。

■ソフトの「好きな」戦法が流行を生む

  私の場合はプロになる以前からずっと「なるべく戦法の好き嫌いを作らない」ように努力してきた。もちろん実際には好き嫌いはあるが、できる限りそれを少なくすることで、自分にとって相性の悪い土俵を作らないで済む。

 正直に打ち明けると「超急戦」と呼ばれるような将棋は全く自分の好みではなかったが、そうした戦いにも時には挑戦した。意識的にそう努めることで、どんな戦法が流行してもその土俵で戦うことができる。

 私がプロ入りした2004年頃にはそのような棋士は少なかった。少数派のポジションを取れたことは、当時の自分にとって少なからず幸運なことだったと思う。しかし当時と比べると、いまは若い棋士にもオールラウンドプレイヤーが増えてきた。どの世界でも良い戦略はマネされる。その一例かもしれない。

  現在のプロ将棋界では「角換わり」と呼ばれる戦法が大流行している。実は多くの将棋ソフトもこの戦法を好んで採用する。対照的に「振り飛車」はソフトにはあまり好まれないようだ。

 現在の流行は、AIの好みを人間が取り入れた結果によるところが大きい。ソフトが評価しない作戦をわざわざ指すことはリスクが高い。角換わりの流行は今後もしばらくは続くだろう。当面はこの戦法を誰よりもマスターすることが勝ち続けるためには欠かせない。

 ソフトが好んで採用するということは、それだけ評価がより正確になるということにもつながる。「振り飛車」などの戦法に比べると、角換わりに対するソフトの評価は相対的により正確になりやすい。

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