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北朝鮮経済、「4500社分析」が映す実像

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 12日にシンガポールで開かれるトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との会談が国際的な注目を集める中、北朝鮮経済の改革・開放政策の行方にも関心が高まっている。将来の国連による対北朝鮮制裁の解除もにらんで、同国への投資を検討する組織を設ける韓国企業も出始めた。ただその実像については限られたデータでしか、うかがい知ることができないのが現状だ。朝鮮半島のビジネス環境はどう動くか。北朝鮮経済の研究者らに聞いた。(写真は平壌市内のビアホール、2016年8月、柳学洙氏撮影)

■「計画経済」と「自力更生」が基本政策

 「北朝鮮の工業構造は朝鮮戦争後の1950年代からの政策を基本的に継承している」とみるのは日本学術振興会・柳学洙特別研究員だ。北朝鮮は旧ソ連のように全面的な体制変革を体験せず、中国、ベトナムのような本格的な改革・開放政策も採用しなかった。国家予算の飛躍的な増大もないという。柳氏は80年代に北朝鮮の学術機関がまとめた全国的な地理、経済資料の「朝鮮地理全書」に記された約4500社を空間経済学的に分析し、「計画経済システム」と「自力更生路線」が現在も続く根幹的な産業政策であると結論付けた。

 計画経済システムは鉄鋼など国営の重工業部門への政策で旧ソ連の「企業長単独責任制」をモデルにしたという。戦略的に重要な大企業については、国家による集権的な管理を重視し、平壌周辺など特定地域に投資を集中させた。しかし行政機関の肥大化、労働者のインセンティブの欠如などで効率性の悪さが問題となり。北朝鮮はさまざまな制度改革を試みたという。1961年には「大安の事業体系」と呼ぶ企業管理性を導入、朝鮮労働党の指導ラインに組み込むことで管理を強化した。

 70年代には「連合企業所」という企業集団の設立を進めた。複数の企業を組織化し、資材調達や計画作成に関する裁量権を与える分権化方針だ。「北朝鮮は近代的な企業組織の導入を模索してきたが、90年代後半には深刻な経済危機に陥った」と柳氏。

 軽工業や日用品に関わる工業では北朝鮮独自の「自力更生」政策で企業や工場を配置した。その特徴は(1)原料・燃料の生産地を消費地に接近させる(2)バランスのある発展を目指すために全国的な範囲で配置する(3)国防を考慮する――だった。国防を重視した企業配置については、将来米軍からの攻撃を受ける可能性に備えて、沿岸部の生産拠点を内陸部に移転させるなどしたという。

 だが、政策として一貫して重視したのは(2)の均等原則に基づく工業配置だ。特に軽工業部門の企業は、全国的範囲で広く均一に分布させて、各行政区域内で自己完結型の経済サイクルを構築することを目指したという。ただ小規模な企業も多く、マネジメント能力の面では疑問が残る。

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