危機管理広報 エイレックス江良俊郎社長に聞く

日大、財務省…危機に鈍感な組織の病巣 国民の厳しい目 楽観は禁物

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 SUBARU(スバル)検査不正、日大危険タックル、財務次官セクハラ――。不祥事「鎮火」に失敗し、信頼が失墜する組織が続出している。発覚後の対応で浮かび上がる共通点は、危機や風評に対する鈍感さ。隠そうとしたり、調査中を理由に情報を出し渋ったりする間、内部告発の映像や音声がSNS(交流サイト)で簡単に拡散する「デジタル時代のリスク」を読めていない。危機への嗅覚を高めるにはどうすればよいのか。危機管理広報コンサルティングが専門のエイレックス(東京・港)の江良俊郎社長が緊急連載で提言する。

■正しい情報つかめない本部、不祥事対応で迷走

 テレビ中継を見て「この会見はひどいな」と感じた。危険タックル問題を受けた日本大アメリカンフットボール部前監督らの釈明に、最初から勝ち目はないと思った。広報のプロは付いていなかったのか――。第三者的な立場で冷静にアドバイスできる人がいたら、ここまで記者会見が紛糾することはなかったのではないかと思う。

 テレビや新聞は不祥事発覚後の当事者の対応を、不祥事自体より長期間報道する。特に今回は民放各局の情報番組での扱いが過熱した。記者会見は危機対応上、最大の関門。状況を把握した責任ある立場の人物が以下の点をはじめに説明しなければならない。

(1)何が起きたのか

(2)心からの謝罪

(3)なぜ起きたのか

(4)誰が責任を取るのか

(5)再発防止の決意

 その上で、記者の厳しい質問の全てに正面から答えることができれば、その後の展開が変わる可能性がある。ただし、答える内容だけでなく、態度や服装、表情づくりまで一切の油断が許されない。

 不祥事発覚後の記者会見の重要さについては、次回もっと詳しく述べたいと思う。今回は総論として、危機対応に失敗する組織の法則や共通点について考えてみたい。

 再び日大の問題を例に取るが、記者会見を開いた大学当局や広報担当者が当初は正しい情報をつかめていない様子だった。そもそもネット上で悪質なタックルとして動画が公開され炎上したにもかかわらず、事実関係を調査した形跡もないようだ。企業の不祥事発覚後でも、製造部門などの現場で何が起きているのか、担当役員が詳細を把握できないことがある。こんな時はためらうことなく、本部の人間、できれば広報の担当者も迅速に現場に派遣し、聞き取り調査すべきだ。

■処分恐れる現場を説得、真実語らす

 神戸製鋼所や東レの品質不正、SUBARU(スバル)や日産自動車の検査不正――。最近発覚した企業の品質不祥事は、安全性に問題ないレベルであるにもかかわらず、世間から厳しく批判された。本社と現場の意思疎通が悪く、情報公開が小出しになるなどして世間の疑念を広げてしまった。「社会に公表する必要性を感じなかった」とした企業もあった。

 トップが引責辞任した神鋼は、アルミ・銅製品のデータ改ざん発覚後、グループの鋼板加工会社で別の不正が確認された。スバルは5日、昨秋以降4度目の不正が発覚し、トップが代表権返上を表明した。次々に新たな不正が出てくるとダメージは大きい。発覚後、他に不正はないかといった社内調査はしっかり実施しなければならない。

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