日本企業の競争力を奪った統治改革の失敗 経営はだれのものか

内部統制がもたらした五つの深刻な問題 加護野 忠男

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(2)日本の場合、このような制度は不要である

 もっと効果のある内部統制の仕組みが日本の会社のなかにある。新しい制度を導入するよりは、今の仕組みがよりうまく機能するようにした方がよい。

 米国型の内部統制システムは、経営者も管理者も、必要に応じて外部から有能な人を雇い入れるという米国の企業制度を前提にしてつくられたものである。しかし、日本の企業ではそもそもそのような雇用慣行はない。日本のトップや管理者は、内部から時間をかけて昇進してきた人々がほとんどである。長時間をかけて社内で人材の育成を行い、その人物が信頼できるかどうかが多くの人々の目でチェックされている。

 日本の企業には、働く人々の信頼をチェックするシステムがいくつかある。

 その第一は、多面的・多元的・多重的信頼チェックシステムである。多元的というのは、上司だけではなく、人事部や同僚など多様な人々がチェックしているという意味である。多面的とは、仕事という側面だけでなく、仕事外の側面をも含めた多様な側面がチェックされているという意味である。多重的というのは、昇進前に信頼チェックが行われるだけでなく、昇進後も何重にもチェックが行われるということを意味している。

 このように長期にわたる多重的・多元的・多面的信頼チェックシステムがあるために、日本の組織では危ない人物は排除されていく。

 それだけではない。日本企業の人事部は、人に関する情報を継続的に集めており、それをもとにすれば、企業のどこで怪しいことが起こっているかが推測できる。人事部は、怪しいと思うと、人事権を利用して人を移動させることによって不祥事を未然に防ぐことができる。人事部だけではない。見えざる出資をしている従業員や管理者は、企業と一体化しており、お互いに監視しあっている。上からの監視だけでなく、下からの監視も行われている。

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