日本企業の競争力を奪った統治改革の失敗 経営はだれのものか

内部統制がもたらした五つの深刻な問題 加護野 忠男

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 日本では米国の手順に若干の変更が行われたが、煩雑な方法がそのまま適用された。このように細かな規則を決めても、経営者が行う悪意の犯罪は防げない。実際に、大王製紙事件もオリンパス事件も、財務報告の内部統制のルールが施行されてからも継続されていた事件である。

内部統制システム五つの問題

 内部統制システムには、次の五つの深刻な問題がある。

(1)導入に大変大きなコストがかかる

 企業内の意思決定プロセスを公式化し、それぞれの意思決定の手順とルールを決めるためには膨大な作業が必要である。何よりもコンサルタントに莫大な費用を払わなければならない。

 どれほどコストがかかっても、それを正当化するだけの効果があるのならば、システム導入には意味がある。ところがそれだけの費用をかけても、内部統制システムでは不祥事を防ぐことは難しい。

 そもそもどのような厳しい制度を導入しても、不祥事は防げない。意図的に悪事を働こうとする人々は、ルールをよく調べており、その盲点を探し出して悪事を働こうとする。それを防ごうと思えば、そもそも権限委譲などできない。すべての意思決定を取締役が行い、その執行をすべて取締役自身がチェックするというような仕組みをつくらなけばならないが、そのような仕組みは現実的ではない。その場合でも悪事を絶対に防げるとはいえない。取締役自身が悪事を働こうとするときは防げない。エンロンやワールドコムの場合がそうだった。

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