日本企業の競争力を奪った統治改革の失敗 経営はだれのものか

イノベーションを潰す悪しき利益志向経営 加護野 忠男

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 利益志向経営の第三の落とし穴は、引き算経営になってしまうことである。引き算経営とは、他のステークホルダーへの支払いを減らすことによって利益を上げようとする経営である。人減らし、非正規労働者の多用による人件費の削減、サプライヤーからの調達費の切り下げなどによる利益の追求である。これでは、株主以外のステークホルダーとの利益の予定調和ははかれない。犠牲になった集団の協力は仰げないし、連帯意識も低下する。

 最後は、利益以外の指標を用いる場合にも起こる問題である。事前評価をより厳しくすると、高い成果が得られなくなるというパラドックスである。

 表2-3は、合理的な選択に関する四つのケースを描いたものである。第一は、事前の評価で合理性があると思われる計画を選んで、事後的にも合理性があったというケースである(ケース1)。

 第二は、事前評価で合理的と思われたが、事後的には不幸にして合理的ではなかったケース(ケース2)。

 第三は、事前評価では合理的ではないと評価されたが、それでもあえて実行してみると、事後的には合理的だったケース(ケース3)。

 第四は、事前評価で合理的ではないと評価されたが、実際に実行してみると事後的にもやはり合理的ではなかったケース(ケース4)。

 それぞれのケースで実際に何が起こるかを考えてみればよい。

 ケース1は、それほど確実ならば、競争相手も同じ選択をするため、競争が生じて小さな成果しか得られないことが多い。

 ケース2は、うまくいくと思ったが、予期せぬ出来事が起こって失敗になってしまうという結果が得られる。合理的だと思っているわけだから、投資も大きくなる。そうすると失敗も大きくなる。

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