日本企業の競争力を奪った統治改革の失敗 経営はだれのものか

イノベーションを潰す悪しき利益志向経営 加護野 忠男

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 その代表はエレクトロニクス企業である。これらの企業では、自社で投資をする代わりに国内外のEMS(電子機器受託生産)企業への外注が多用されるようになった。外注を利用すれば投資の必要はない。この方式を取れば、人が要らなくなるし、投資を減らすこともできるが、企業内部の製造ノウハウは消滅してしまう。それは製造技術力を低下させるだけでなく、製品開発力をも低下させてしまう。それだけではない。サプライヤーの経営もゆがむ。海外のEMS企業は、量をまとめることによって価格交渉力を強め、部品の買い叩きによって利益を上げるというビジネスモデルを持っている。

 このようなEMS企業との取引が主流となると、部品サプライヤーはコストばかりを考えるようになってしまう。品質や性能の劣化が起こる。それはまた、最終製品メーカーの競争力をも低下させてしまう。

 投資計画の承認に当たって利益率を最も重要な判断基準とすることから、もう一つの問題が起こる。利益率の予測が難しい新規案件は提案されなくなる。やってみないとわからないというようなリスクのあるプロジェクトは最初から評価対象としてあがってこない。利益率を予測しやすい既存の事業の延長上で考えることのできる案件ばかりになってしまう。しばらくは利益率が低いが、将来的には利益率の上昇が期待されるような案件は提案されなくなる。このような傾向は、四半期決算制度が導入されてからとくに顕著になってきたように思える。

 ちなみに1980年代に米国企業が競争力を失ったときに、その最大の原因だといわれたのは四半期決算制度であった。四半期ごとに公表される業績をよくするには、すぐに効果の出る投資が優先されてしまって、長期的にしか効果が出ない抜本的対策はとられなくなるからである。この四半期決算制度が日本にも導入されてしまった。欧州では、四半期決算制度は導入されていない。日本の市場管理者は欧州の見識を見習うべきだった。

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