技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

コンセプト創造からすべてが始まる 伊丹 敬之、宮永 博史

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 それに比べて宅急便は、電話一本で、荷物一個から、家まで取りにきてくれる。しかも、翌日には届くというのだから驚きだ。値段もわかりやすい。実際に「クロネコヤマトの宅急便」を使って荷物を送った主婦が、その翌日、相手に荷物を送った旨の電話連絡を入れたところ、もう着いたと言われて、双方ともに驚いたという。その驚きから、送り手ばかりか受け手も宅急便を使ってみようという気持ちになる。これこそが、「聞いて驚き、使って驚く」いいコンセプトの第一条件なのだ。

 いいコンセプトは、製品でもサービスでも、実際に使ってみると見聞きしていた以上の素晴らしさに驚く。その驚きが他の人に伝わっていく。こうして、感動が次々と伝染し、製品が普及していく。「聞いて驚き、使って驚く」コンセプトには伝染効果がある。イノベーションとは、まさに感動の連鎖を起こすことにほかならない。

 二つめの条件は、そこに、驚くだけの技術と仕組みの裏打ちがあることだ。いいコンセプトというのは、それまでの常識を覆すものだから、まずは「そんなバカな」という反応が返ってくる。しかし、それを実現する技術と仕組みの裏打ちさえわかれば「なるほど」と納得する。

 宅急便を使った主婦も、最初は半信半疑であったであろう。それまで、いつ着くかわからないと言われていたのに、翌日着くと言われてもにわかには信じがたい。だから、それまでと同じように、荷物を送った旨を伝える電話をしたのである。

 宅急便のサービスを誰よりも「そんなバカな」と思ったのは、ヤマトの社員や経営幹部たち自身であろう。法人相手の商業貨物輸送とはまるで勝手が違う。商品が工場から出荷され、問屋や卸などの流通業者を経て小売店に運ばれる。この間の輸送を扱うのが商業貨物輸送である。その特色は、毎日または毎月決まって出荷され(反復的)、荷主によって輸送ルートは決まっており(定型的)、輸送ロットは大口で(大量的)、運送業者にとって扱いやすい市場であった。

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