技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

コンセプト創造からすべてが始まる 伊丹 敬之、宮永 博史

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 輸入したコンセプトを実現しようと、多くの企業が一斉に開発に走るのは日本の得意パターンだ。はるか極東の小さな島国から、基本コンセプトは同じでも、もまれにもまれた改良製品が次々と生み出されては、さすがに本家本元の企業もなすすべがなかったであろう。企業どころか産業そのものが国内から消えてしまった国もある。たとえば、米国では、かつて世界最大を誇ったRCAをはじめ、ほとんどの家電メーカーが姿を消した。

 先を行く企業がいなくなれば、今度は自分たちでコンセプトを生み出していかなければならない。しかし、新しいコンセプトを生み出すことはそう容易ではない。冒頭の経営者の言葉は、まさにこの二つのこと、コンセプトを自ら創造する必要性とそのむつかしさを意味している。

 もちろん、日本企業の中にも、森健一さんの日本語ワープロやソニーのウォークマンのように、新しいコンセプトを創造して製品化したものもないわけではない。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズもソニー製品のコンセプトに心酔し、実際に日本企業から多くを学んでいる。

 しかし、これからは、一部の企業だけではなく、もっと多くの企業が新しいコンセプトを創造していかなければならない。そう覚悟を決めたほうがよい。企業規模の大小にもよらない。むしろ、技術はありながら下請けに甘んじている中小企業こそ、コンセプト創造が下請けから脱却する鍵となる。

 コンセプトは、製品はおろか企業の命運すら決めてしまう。同じ技術でも、コンセプト次第で評価が180度変わってしまう。住友スリーエムのポスト・イットを考えてみればわかる。強力な接着剤を開発しようとしたのに、意に反して、「くっつくものの剥がれてしまう」接着剤ができてしまった。当初の目的からすれば、この技術開発は完全に失敗である。しかし、失敗と思われたその特性こそ、まさにポスト・イットにとって望ましいものであった。技術開発の評価が失敗から成功に変わった瞬間である。

 繰り返すが、新しいコンセプトを生み出すことも、そのマネジメントもそうたやすいことではない。経営者自身もそうした経験を持っていないのだから、どうマネジメントしてよいか答えを持ち合わせていない。

 コンセプト創造は、技術開発と並ぶMOTの重要テーマなのである。

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