技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

コンセプト創造からすべてが始まる 伊丹 敬之氏、宮永 博史氏

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これからはコンセプトの時代

 東京理科大学が主催したある年のMOTシンポジウムでのことである。理学博士号を持ち、自らMOTを実践している大手企業の経営者が基調講演に立った。講演が終わり、パネル討論の場となって話題がMOT教育に転じると、この経営者は、「これからはコンセプトの時代、いいコンセプトを創ることこそ重要」と力説したのである。技術を活かすも殺すもコンセプト次第なのだと。技術開発をドライブするのはコンセプトであり、そのコンセプトを自ら生み出せる人材の育成こそ急務だと強調したのである。

 研究開発テーマを選択する際には「技術の目利き」が必要となるが、ここで強調したいことは、目利きする対象は「技術だけではない」ということだ。科学的知識の深さと人間心理の読みの深さの両方が必要なのである。科学は技術のベースであるから前者は当然として、見逃しがちなのが後者なのである。技術の目利きと誰からも認められている人ほど、人間をよく観察することによって新しいコンセプトを構想する。そのコンセプトを実現するために必要な技術は何だろうかと、コンセプトの視点から技術を目利きできる人こそ、本当に「技術の目利き」なのである。

 かつて、欧米の企業が生み出した製品やサービスのコンセプトを輸入していた時代のマネジメントでは、自らコンセプトを創造する必要性をさほど感じなかったであろう。いみじくも、当時の状況について、ある大手電機メーカーの幹部はこう告白している。「昔のマネジメントは簡単でしたよ。欧米企業の製品を入手して、部下たちに、これと同じものを安く作れと言えばそれでよかったのですから」。すでに成功しているコンセプトを真似るのだから事業としてのリスクは低い。ひたすら技術を磨き、品質を上げ、価格を下げる努力をすれば、売れるに決まっている。

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