技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者が引きこもりやすい三つのタコツボ 伊丹 敬之、宮永 博史

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教育された技術体系に縛られる

 二つめは、自分の専門分野というタコツボだ。三つ子の魂百までではないが、技術者はまだ若く吸収力のある時代に選んだ専門分野にどうしてもとらわれがちだ。変化の激しい現在、大学や大学院時代の専門知識が一生通用するはずもないし、そもそもそこで身につけた専門性などたかが知れていよう。それでも最初の専門分野にとらわれる技術者は多い。

 技術者魂は大学院時代または企業に入った段階で形成される。技術者として、仕事の進め方など、このときに受けた基本教育は、その後の技術者人生の基本となる。若く、吸収力に富んだ時代に、どのような教育を授かるかはきわめて重要である。

 技術者としての基本教育は、まず大学の専門教育で行われる。技術者の卵たちは、物理とか化学とか電気工学といったすでに確立された教育体系に「配属」される。専門教育の体系化は、すでに確立された技術体系にもとづいてなされている。しかし、技術の最先端は、確立された技術体系分野の境界領域で起こる。

 そもそも、事業化を考えた場合、一つの専門分野の技術だけで事が済むはずもない。大学時代の専門性にこだわっていたら、とても事業化で成功することなど覚束ない。それでも、そこから離れられない技術者が多いのである。たとえば、あのインテルの創業者たちですら、最初はそうであった。

 インテルの創業にかかわったゴードン・ムーアやアンディ・グローブといった技術系経営者たちも、その専門分野は物理や化学であった。アンディ・グローブは、もともと、大学で化学を教えていたほどだ。経営者であり技術者でもあった彼らは、半導体の物理を理解し、化学の知識も総動員し、DRAM事業を興していったのである。

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