技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者が引きこもりやすい三つのタコツボ 伊丹 敬之、宮永 博史

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 技術者による講演も重要な情報収集手段であるが、本当に重要な情報はむしろ講演の外で語られる。懇親会や食事の場が貴重な情報収集の場となるのである。インターネットが普及した今でも、忙しい時間を割いて学会の場にせっせと足を運ぶのは、貴重な情報をいち早く収集し、人的ネットワークを維持し、そして、ささやかな息抜きをしたいからだ。

 長々と学会の効用を述べてきたが、技術者にとっても技術開発をマネジメントする人にとっても、学会がきわめて有効な場であることに疑問の余地はない。

学会のマイナス面

 学会にはこのように多くの価値がある一方で、マイナス面があることも否めない。

 一つめのマイナス面は、情報漏洩に関する点だ。技術成果を発表する場であるということは、当然ながら、競争力の源泉となりうる秘密を他社に知られてしまうリスクもあるということだ。技術者は、自分の成果を自慢したいあまり、事業にとっては不利益となることまで発表してしまうかもしれない。たとえ発表前に上司や法務部が内容を十分精査し、問題ない範囲に抑えたとしても、発表後の会話で思わず秘密を漏らしてしまうこともありうる。

 実際、著者もまだ20代の頃、国際会議で発表を終えた直後の休憩時間に、米国企業の研究者10人ほどに取り囲まれ、発表内容について根ほり葉ほり聞かれたことがある。幸い、先輩の研究者が気づいて途中で連れ出してくれたものの、連れ出されるまでは質問されたことについてすべて正直に答えてしまっていた。

 本当に事業で勝負しようと思ったら、学会発表は差し控えたほうがよいかもしれない。社内ですら、知る必要のない人には情報を漏らさないようにしなければならない。

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