技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者が引きこもりやすい三つのタコツボ 伊丹 敬之、宮永 博史

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 学会において、他社の技術者たちは競争相手でもあるが、同じ難問に挑む同士でもある。自分が挑むテーマの価値と難しさを肌でわかってもらえる仲間なのだ。だから、たとえ競合他社に先を越されたとしても、悔しさよりも、困難を克服した技術者とその成果に素直に脱帽し、尊敬の念を感じることすらある。

 ところが社内はそうはいかない。たとえ同じ技術者であっても、分野が違うとその価値は共有されにくい。成果をあげても尊敬されるどころか妬まれたりする。技術担当役員以外の経営幹部には技術成果の価値などまったくわかってもらえない。こうした不満を抱く技術者にとって、自分が所属する企業よりも学会という場のほうがはるかに居心地がよいのである。

 研究所にこもり、往々にして私生活すら犠牲にして開発に励む技術者にとって、国際会議で成果を発表することは、長年の苦労が報われる晴れ舞台である。なかには、国際会議にかこつけて、会社の時間と費用で、業務と称して堂々と海外旅行ができると考える技術者もあるだろう。事実、国際会議は有名な観光地で開催されることも多い。欧米の技術者の中には、堂々と家族を伴って国際会議に参加する人もいる。

 企画部などに異動していてしばらく技術開発の現場から遠ざかっていた技術者にとっても、学会は貴重な存在だ。自分の専門分野といえども、現場から離れている2~3年の間に技術はかなり進歩する。そのギャップを埋め、何を研究テーマにすべきか、意思決定のための重要な情報を収集することができる。

 企画部から戻るときにもとの組織と異なる場合もある。専門と違う分野に身を置くときにも学会は役に立つ。専門分野が異なると、いきなり最先端の話についていくことはむつかしい。学会は、その技術分野を概観する論文を専門家に依頼することによって、門外漢にとってもありがたい情報を提供してくれる。論文を読み、実際に講演を聴き、講演者に教えを乞えば、きわめて短期間にその分野にキャッチアップすることができる。そこで知りあった技術者と情報交換を継続し、場合によっては、ヘッドハンティングすることもできよう。

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