技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

イノベーション経営を阻む三つの関門 伊丹 敬之、宮永 博史

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 したがって、死の谷は市場への出口を作る段階の中間点でくる。それはあくまでも自社の中の谷で、自社の中で事業化段階へと進むかどうか決めるという谷である。しかし、その谷は越えたとしても、それで市場への出口が実際に作れるかどうかは、保証の限りではない。市場への出口が作れるかどうかを決めるのは、市場なのである。つまり、市場への出口はダーウィンの海の中にある。

 したがって、事業化へのゴーサインが出れば、しばらくして実際にダーウィンの海を泳ぎ始めることになるだろう。商品として市場へ供給を開始するということである(E)。DとEが同じ時点である企業もあるだろう。その後しばらくして、その事業化への努力が「市場への出口」というかたちで小さな規模にしろ現実の需要としてある規模で生まれるとき、出口形成の段階は終わる。これがFである。

 ここで、ダーウィンの海を半ばまできたことになる。これ以降、関係者の努力はその出口を大きな需要にしよう、社会を動かそうというものに変質していく。それもダーウィンの海の中で泳ぐ努力ではあるが、その速度を上げる、彼岸へ向けて突っ走る、という努力である。

 こうした社会を動かす努力が実を結ぶと、初めて実際に社会が動き、大きな需要が生まれ、人々の生活が変わる、という事態になる。これがイノベーションが成就する時点、つまりG点である。

 つまり、イノベーションの第三の段階(社会を動かす)のマネジメントは、ダーウィンの海の半ばから彼岸までを指している。彼岸にイノベーションの成果としての「大きな需要」と「人間の生活の変化」が待っている。この第三段階のイノベーション経営では、もはや技術自身はメインの問題ではなく、技術開発の成果の社会的な受容と普及のプロセスのマネジメントになるだろう。

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