技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

イノベーション経営を阻む三つの関門 伊丹 敬之、宮永 博史

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 それぞれの関門を乗り越えることによって生まれる成果は、魔の川では死の谷への移行であり、死の谷では事業化の着手であり、ダーウィンの海では市場での生き残りである。

 ただし、イノベーションを、人間生活に大きな改変をもたらすことと定義すると、ダーウィンの海を無事泳ぐことだけではまだイノベーションとしては不十分であろう。イノベーションには、市場で大きな成功がもたらされることが必要である。つまり、ダーウィンの海の彼方に、社会が動くという「彼岸」があるのである。その彼岸に到達して初めて、イノベーションとなる。もちろん、彼岸に到達できるための前提条件は、ダーウィンの海で生き残ることである。

 この三つの関門を乗り越えるための経営が、イノベーション経営の中心と考えていいだろう。この三つの関門と、先に述べたイノベーションの三段階との関係をイノベーション経営の観点から整理すると、下の図のようになるだろう。

 この図には七つの時点がアルファベットで、時系列で図示してある。まず、技術を育てるプロセスが、典型的には技術者たちの発想から始まる。それがA点である。そして技術開発がある程度進んだ段階で、魔の川がやってくる(B)。つまり、魔の川を越えるとは、技術を育てる第一段階での中間点(BからCへの移行点)を越えることである。

 しかし、魔の川を越えても、まだイノベーションに必要な技術が揃ったわけではない。やっと開発へと移行できるということにすぎない。そして市場化を目指した開発がある程度進むと、市場への出口を作る努力が具体的に小さなかたちで始まる時点がくる。それがCである。この時点で、技術を育てる段階が終わり、市場への出口を作る段階に入る。

 それは開発が本格化する時点といっていいだろう。そのプロセスがある程度進むと、死の谷が待っている(D)。その谷は、事業化の段階に進めるかという時点に存在する谷である。事業化への投資を行うかどうかが、最も重要な判断であろう。市場への出口づくりのトライアル段階で、さらに出口づくりを本格的に事業として行うかを判断するのが、死の谷なのである。

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