技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者は構想・利益なき繁忙に陥っていないか 意味のない忙しさに振り回される三つの要因 伊丹 敬之、宮永 博史

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 上位概念を構想するには、当然、業界を超えた知識も必要だ。電子マネーともなれば、金融業界の知識にも通じていなければならない。ふつうの技術者なら最初から尻込みしてしまう。しかし、上位コンセプトがなかったならば、すでに普及していた磁気カードのシステムをスイカに置き換えることはむつかしかったであろう。

 目の前の開発に忙殺されると、自然と将来像を描く余裕がなくなる。将来像を描かないから、開発している方向性を失い、競争力のない技術開発にリソースをかけるという悪循環に陥ってしまう。どこかで、この悪循環を断ち切らなければならない。では、どうすれば、この悪循環を断ち切れるか。それには、三つの方法が考えられる。

 一つめは、すでに述べたことであるが、日常業務の中に将来像を描く時間を強制的に組み込むことだ。時間というリソースを確保しなければ、将来構想を描くことは無理である。本来業務は本来業務として遂行するが、それとは別に時間を作って、将来像を描き、そのための思考実験やプロトタイピングを行ったりする時間を持つようにする。本来業務の時間を減らすことになるので、この方法を取り入れることはむつしい。だからこそ、強制的に時間を作り出すことから始めなければならない。

 日常業務の中に余裕の時間を組み込むことがどうしてもむつかしい場合には、一つのプロジェクトが終了した時点で、すぐに次のプロジェクトにアサインせず、しばらく将来像を描く場を与える方法がある。これが二つめだ。プロジェクトメンバー全員にそうした場を与えることはむつかしくても、個人にそうした場を与えることはできよう。海外に留学させることはむつかしくても、国内の社会人大学院であれば、職場を離れることなく、仕事をしながら学ぶことができる。技術を経営の視点で見直すことは、技術者を経営者に変えていく大事なステップになりうる。

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