技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者は構想・利益なき繁忙に陥っていないか 意味のない忙しさに振り回される三つの要因 伊丹 敬之、宮永 博史

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手っ取り早く、目の前の問題だけを解こうとする

 技術者が忙しさに振り回される一つの要因は、手っ取り早く目の前の問題だけを解こうとしてしまうことにある。なりふりかまわず目の前の問題を解決することで一時的に成功するかもしれない。しかし、持続的でない方法は忙しさを助長するだけで、やがて破綻する。やはり半導体の例であるが、著者が実際に米国で見聞きした日本企業の事例もそうした典型例であった。

 日本の半導体メーカーが世界を席巻した1980年代後半、マサチューセッツ工科大学(MIT)の准教授が、サバティカル制度を利用して日本の大手半導体メーカーに滞在したことがある。サバティカルというのは、7年に一度、1年ほど大学を離れて研究や専門書の執筆に専念できる制度である。

 1980年代の米国といえば、製造業が苦境に陥り、日本企業に押し切られていた時代だ。半導体もその例外ではなかった。インテルですら、日本企業の怒涛の攻撃の前に、創業の事業であり中心的な事業でもあったDRAMから撤退し、3分の1にも及ぶ社員のリストラに追い込まれている。そこで、この准教授はなぜ日本の半導体メーカーが世界のトップに立てたのか、その秘密を探ろうと日本企業に滞在して研究することにしたのである。

 彼は、毎月のように、ボストンの研究室に残る学生たちに、日本での様子を手紙で知らせてきた(当時はまだ電子メールが普及していなかった)。あるとき、著者の隣でその手紙を読んでいた学生が突然笑い出したことがある。そこには、日本の半導体メーカーの「秘密」が記されていた。

 ちなみに、この准教授は半導体設計の検証ツールが専門分野で、MITでは、コンピュータを使って、自動的に設計検証を行う研究を行っていた。彼は、日本の半導体メーカーはさぞかし優れた設計検証のソフトウエアを開発しているにちがいないとみて、日本に滞在することにしたのである。

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