技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者は構想・利益なき繁忙に陥っていないか 意味のない忙しさに振り回される三つの要因 伊丹 敬之、宮永 博史

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 このオランダ企業は、500社以上からなる社外の部品メーカーと共同開発体制をとっている。露光装置を25程度のモジュールに分け、モジュールごとに部品メーカーと長期契約を結び、開発と生産を任せている。各モジュールを担当する25社の下には、二次メーカー、三次メーカーが存在する。部品メーカーとの間には資本関係はなく、このオランダ企業への依存度も25%を超えないように要請している。緩やかな企業連合体といってよい。

 言葉でいうと簡単であるが、複雑で精密な機械だけに、モジュールに分割して共同開発することは口でいうほど容易ではない。単なる手配師ではだめだ。市場ニーズを咀嚼し、技術開発のツボを押さえ、「どこを自力で、何を他力で行うか」の線引きをし、企業連合体を上手にマネジメントしている。

 こうした開発体制ができたきっかけは、実は苦し紛れであった。大手エレクトロニクスメーカーから1984年にスピンアウトしたこの会社は、分離された当時の社員数は50人ほどで、市場シェアもわずか1%にすぎなかった。スピンアウトというよりも、むしろ親会社から見限られたといってよい。人にも資金にも事欠いていたため、最初から社外のリソースに頼らざるをえなかったのである。そもそも自分たちも中小企業だから、社外の部品メーカーとの関係も大企業対中小企業という一方的なものではなかった。それが幸いした。

 しかも、この開発体制には副産物があった。擦り合わせの極致のようなハイテク装置をモジュールに分割して開発するという常識破りの開発体制は、装置ごとのばらつきを抑えるという副次効果をもたらしたのである。

 日本企業の装置は半導体製造の露光工程ごとに装置をチューンアップして最高性能を引き出している。この方法では、装置が工程ごとに専用化されるため工程間で融通しあうことができない。これに対して、オランダ企業の装置は工程ごとに専用化しないので、異なる工程で融通しあうことができる。その結果、装置の稼働率を高くでき生産性を向上させるのである。日本企業との差は実に2倍ともいわれ、オランダ企業がシェアを拡大した原動力ともなった。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。