技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者は構想・利益なき繁忙に陥っていないか 意味のない忙しさに振り回される三つの要因 伊丹 敬之、宮永 博史

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 マネジメント次第で技術者の忙しさに違いが出ることを、ハイテク装置の開発事例で見てみよう。

 技術の粋を集めたハイテク装置の中でも特に複雑なものに、半導体製造に使われる露光装置がある。人類が生み出した最も精密な装置ともいわれ、インフルエンザウィルスの大きさよりも一桁小さい数十ナノメートルという超微細な線幅を正確に露光する。しかも、前工程で作られた下地パターンと精度よく位置合わせをしなければならない。たとえていえば、2機のジャンボジェット機がわずか0.1ミリメートル以下の近さでぴたりと並び、互いに触れることも離れることもなく、時速1,000キロメートルという高速で地球を回り続けるような離れ業だ。

 半導体露光装置を開発できるのは、世界でも三社に絞られる。そのうち二社は日本企業で、もう一社はオランダ企業である。かつて日本企業二社で80%もの市場シェアを占めていた。ところが、わずか数%のシェアだったオランダ企業が、30年の間にシェアを伸ばし続け、単独で80%と圧倒的なシェアを占めるまでに成長している。かつてトップを誇った日本企業は20%を割り、もう一社は数%ともはや風前の灯火である。

 半導体露光装置に部品を提供している部品メーカーの技術者が、このオランダ企業を訪問したときのことだ。彼は、日本企業二社ともつきあいがあるから、技術者たちが寝る間も惜しんで開発に励んでいることを知っていた。まして、オランダでは、それ以上ハードに働いているにちがいない、そう思った。ところが実際は、まったく違ったのである。彼らはまだ陽の高いうちに退社し、なかにはそれからサイクリングを楽しむ人さえいた。その日が特別であったわけではなく、むしろそれが日常的光景だったという。

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