技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者は構想・利益なき繁忙に陥っていないか 意味のない忙しさに振り回される三つの要因 伊丹 敬之、宮永 博史

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 もちろん、技術者は技術的課題を解決するスペシャリストである。だから、目の前の問題を解くことは間違いではない。むしろ、そのために存在する。しかし、一流の技術者というものは、意味のある問いを発し、正しい問題を設定する。目の前の問題をいきなり解こうとせずに、解こうとしている問題は果たして本質的なのか、問題の捉え方として他の視点はないのか熟考する。まさにこの技術のマネジメントができて初めて一流の技術者なのである。

 技術開発のテーマは顧客からの要望で決まることが多い。むしろ、顧客の声を聞きなさい、独りよがりの開発をしてはいけませんとマーケティングでは教えられる。真面目な技術者ほど、顧客の要望に応えようとする。しかし、真面目なだけで、顧客の要望を咀嚼せず、自分の頭で考えることもなく開発に着手するのは単なる下請けにすぎない。ある意味で下請けは楽ではある。しかし、顧客がこけた途端に自分もこけてしまう。

 正しい問題を設定するには、顧客の要望はあくまでも要望として聞き、そこから自分なりに問題を設定していかなければならない。前回で述べたように、1社だけに頼らず、複数の会社、さらには、顧客の先にいる顧客にもコンタクトし、多様な情報を収集することが必要だ。ところが、複数の企業にコンタクトしない技術者が多い。言われたことをすべてしなければならないと勘違いしているからだ。上司も義理人情論を振りかざし、1社とだけのつきあいを奨励する。

 下請けから脱却するためには、中立を守り、複数の企業と接点を持ち、全体像を把握し、将来構想を描いたうえで、技術開発テーマを設定していかなければならない。

 コンセプト創造について以前の回で述べたように、欧米からコンセプトを輸入し、欧米製品よりも性能や価格で優れたものを開発してきた時代は、解いている問題そのものに疑問を呈する必要はなかった。追いつき追い越せで先を行く企業の背中を追いかけている時代は、問題をひたすら解けばそれでよかったのである。

 しかし、先行する企業を抜き去って、自分が先頭に立ってしまった途端に、もはや正しい問題を与えてくれる人はいなくなる。自ら問題を創らなければならない。もちろん、問題のヒントは顧客が与えてくれる。しかし、あくまでもそれはきっかけにすぎないと自分に言い聞かせなければならない。

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