技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

技術者は構想・利益なき繁忙に陥っていないか 意味のない忙しさに振り回される三つの要因 伊丹 敬之、宮永 博史

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 しかし大切なのは、人海戦術でやったほうが速くて正確なときから、「急がば回れと我慢して検証ツールを使い続けること」だ。最初は検証ツール自体にバグがあるかもしれない。だから、人海戦術も必要だろう。しかし、我慢して使い続けないと検証ツールの技術が蓄積されず、いつまでも使い物にならない。検証ツールが使い物にならなければ、毎回、体育館で鉛筆と消しゴムで検証をすることになる。人海戦術では無理だとわかってから検証ツールに頼ろうとしても、もはや手遅れだ。複雑になりすぎて、バグとの戦いに消耗される。目の前の問題をとりあえず解決しようと人海戦術に頼ることによって、忙しさから解放されるどころか、忙しさを拡大再生産してしまうのである。

 この事例は、竹やりで飛行機を落とそうとする話にどこか似ていないだろうか。持続性のあるマネジメントをしなければ、ただただ忙しいだけで事業に貢献する技術とはなりえないのである。

意味のある問いを発することができない

 これが二つめの要因だ。技術者が、目の前にある問題をいきなり解こうとするのは、学校教育でそのように訓練されてきたからでもある。試験問題を与えられたら、一刻を争って問題を解き始める。試験問題そのものに疑問を呈することはないし、まして、白紙の問題用紙が配られ、自分で問題を創って解きなさいという試験などありえない。

 こうした習性は、社会に出てからも強化される。問題そのものに疑問を呈することや、問題そのものを創ることよりも、ひたすら与えられた問題を解くことを強要される。技術者にとっても都合がよい。問題を解いているといかにも働いているように見える。製造条件を細かく変えた実験やシミュレーションを行おうと思えば、いくらでも行える。時間がいくらあっても足りないほどだ。

 これに対して問題を創ること、つまり、コンセプトを考えることは、一見遊んでいるように見える。しかも、すぐに成果が出るわけでもない。実験や設計の「作業」をしていれば、必ずなんらかの「結果」(それを「成果」と勘違いする)は出てくる。だから、定期的な業務報告書に書く内容に困ることはない。しかし、問題そのものを創ろうとすると、業務報告書に書く内容がまったくないこともありうる。そうしたつらさに耐えられない技術者は、問題を創ることよりも、問題を解くことに注力する。これが構想なき繁忙を生む。

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