技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

思い入れと思い込みを混同しやすい技術者たち 伊丹 敬之、宮永 博史

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 情報収集で威力を発揮するのが、プロトタイピングである。具体的なプロトタイプを見せることによって、顧客からも具体的なフィードバックが返ってくる。また、単に顧客に聞くだけでは十分ではない。顧客の行動を観察し、顧客自身も気づいていない潜在ニーズに気づくことだ。

 顧客と違って競合他社の情報を入手するのはむつかしい。しかし、競合他社の立場に身を置くことはできる。その一つの方法は、同じ社内で、開発責任のない同僚たちに競合他社の立場になって自分たちの開発目標をチェックしてもらうとよい。開発責任があるとどうしても自分たちに都合のよい思い込みをしがちだ。開発責任がない人間は傍目八目となれる。そうしたいわば無責任な人たちの意見を聞くことはつらく、痛みを伴う。その痛みに耐えかねて聞く耳を持たなくなってしまうと、思い込みのワナにはまってしまう。痛みに耐えながらも思考を突き詰めていくことで、次第に全体が見えてくる。自分たちの開発に自信がついてくるのである。開発が終了した時点における顧客や競合他社の反応が具体的にイメージできれば、思い込みから脱したといえる。

 すべての技術者が、こうした努力をする必要はない。しかし、技術開発をリードする責任者は、くれぐれも思い込みにとらわれないようにしなければならない。責任は重大なのである。

伊丹 敬之, 宮永 博史 著『技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か』(日本経済新聞出版社、2014年)第14章から
伊丹 敬之(いたみ ひろゆき)
東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。72 年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(PhD)。その後一橋大学商学部で教鞭をとり、85年教授。この間スタンフォード大学客員准教授等を務める。
宮永 博史(みやなが ひろし)
東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。1979年東京大学工学部電気工学科卒業、89年MIT大学院(EE & CS)修了。NTT電気通信研究所、AT&Tベル研究所スーパーバイザー、ルーセントテクノロジー社マーケティングディレクターを歴任。96年コンサルティング業界に転じ、SRIインターナショナルを経て、2000年デロイト・トーマツ・コンサルティング(現アビームコンサルティング)統括パートナーに就任。04年より現職。

キーワード:経営層、管理職、企画、経営、技術、ものづくり、ICT、製造、イノベーション

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