技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

思い入れと思い込みを混同しやすい技術者たち 伊丹 敬之、宮永 博史

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 コマツでは、ダントツの定義を、次のように明確に規定している。

1.すべてを満足させるようなことをせずに、犠牲にするところを最初に決めなさい。国内でしか売れないような商品の開発はやめなさい
2.いくつかの重要な性能やスペックで、競争相手が3~5年追いついてこられないような際立った特徴を持ちなさい
3.ただし、それは、環境・安全・ICT、この3つのキーワードで取り組みなさい
4.かつ、コストは従来品と比べて10%以上削減しなさい

 優等生的に性能比較表をすべて○で埋めるような技術開発は最初から行わないのである。捨てることによって余裕ができたリソースを使って、ダントツな特徴を持たせる。世界中で稼働する建機の状況をリアルタイムで把握し、遠隔操作でエンジンを止めることもできるコムトラックスや、資源の輸送に使うダンプトラックの無人運転を可能にするなどダントツ製品・ダントツサービスを生み続けている。

 性能比較表に○×をつけて、浦島太郎型の開発に満足している企業は、競合他社の進歩を忘れているのもさることながら、顧客を見るという本来の姿を忘れている。何年もの間、竜宮城(実験室)にこもるのではなく、こまめに陸にあがらなければ(顧客との接点を持たなければ)、酸欠状態(情報不足)になってしまう。

社内では新技術、世間では二番煎じ

 三つめが、世間では二番煎じ・三番煎じの技術を、社内では新しい技術だという井の中の蛙的な思い込みだ。これも実に多い。

 イノベーションを興すためには、ときに、社内にそれまで蓄積されてきた分野と異なる技術開発を行う必要が出てくる。社内に蓄積されてきた技術開発の延長線上にないから、その分野に精通している技術者はもちろん、その技術をベースにした製品を扱った事業経験者も社内に存在しない。

 社内に蓄積されていない技術だから、開発を進めれば、やることなすことすべて新しい蓄積となる。技術が蓄積されれば、その技術をベースにした製品開発に期待がかかる。ところが、社内では新技術・新製品でも、世の中では二番煎じ・三番煎じということがよく起こる。まさに井の中の蛙型技術開発なのである。

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