技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

思い入れと思い込みを混同しやすい技術者たち 伊丹 敬之、宮永 博史

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 何がいけなかったのか。最初の比較表を作る段階での思い込みだ。開発期間を仮に一年とすれば、自社が技術開発を終了するまでの一年間、他社の技術はまったく進歩しないと思い込んでしまっている。当然、他社も技術開発を行うのだから、一年後にはさらに先に行っていることは容易に想像できる。したがって、技術開発をスタートする段階で、開発が終了する時点における他社の技術進歩を考え、それでも優位性が保てる目標を設定しなければならない。もちろん、自己満足な目標ではなく、顧客にとって価値のある技術開発目標であることは言うまでもない。

 技術開発だけではない。コスト削減についても同様だ。他社との価格を比較し、たとえば二割ほど低価格の製品を開発しようと計画する。ところがここでも、他社の価格は将来も下がらないと勝手に仮定してしまう。だから、無事にコスト削減プロジェクトが終了し、二割安い製品を出した途端に、競合他社に値下げされてあわてふためくということになる。これも当たり前といえば当たり前の話だ。

 なぜ、自社だけ技術開発やコスト削減が進み、他社はその間、まったく進歩しないと思い込んでしまうのであろうか。もともとハードルの高い技術開発やコスト削減目標を、競合他社も進歩することを前提にして計画を立てれば、さらに自分で自分の首を絞めることになる。もはや実現不可能なほどハードルの高い目標になりかねない。心理学の教えるところによれば、人は自己防衛行動をとるというが、技術者も無意識のうちに都合のいい仮定をおいて自己防衛に走ってしまうのであろう。

 そもそも、性能比較表自体に問題がある。これでは、チキンレースから逃れることはできない。必死に技術開発しても、すぐに追いつかれてしまう。こうしたチキンレースと決別するために、ダントツというキーワードで技術開発・製品開発を進めている企業がある。ブリヂストン、ヤマト運輸、コマツといった企業群だ。ダントツを掲げる企業は、その名の通り、単なる性能比較表で競争しない。

 超大型ダンプトラックに使われるブリヂストンの巨大なタイヤは、作れば売れるダントツ製品だ。そうしたタイヤを装着したダンプトラックが稼働する現場にブリヂストンの社員が常駐し、技術サポートをすると同時に、潜在ニーズの情報を本社に送り続ける。競合他社との比較よりも、常に顧客を見続けている。

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