技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

思い入れと思い込みを混同しやすい技術者たち 伊丹 敬之、宮永 博史

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自社技術だけが進歩するという思い込み

 次に技術者が陥りがちなのが、自社の技術開発だけが進み、競合他社の技術開発はまったく進まないという思い込みだ。実に不思議なことだが、そうでないケースを探すほうが難しいほどこの思い込みも多い。まさか、そんなことはあるまいと思うかもしれないが、そのまさかが堂々とまかり通っている。

 技術開発を計画する段階でたいていの技術者は、競合他社と性能や機能を比較した星取り表のようなものを作成する。リストアップした性能や機能ごとに、○△×をつけて他社と比較し、自社で×となっている性能や機能を○にすることを目指して技術開発がスタートする。そして、一年間であればその一年の間、ひたすら技術開発に没頭する。

 ところがこのやり方は往々にして失敗する。開発に失敗するのではない。最初の考えが間違っているのである。それはなぜか。

 一年後、当初の計画通り、技術開発に成功したとしよう。自社が劣って×がついていた性能を○にしたのだから文句なく成功のはずだと思い込む。ところが、ふたを開けてみると、競合他社はもっと先を行っているのである。つまり○が再び×となっていることに気づかされる。まるで現代版浦島太郎のようだ。竜宮城である実験室にずっと閉じこもってひたすら開発し、ようやく地上(世の中)に出てみると、すでに競合他社はもっと先を行っていて、開発した技術がまったく競争力を持っていないことに愕然とするのである。

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