技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

思い入れと思い込みを混同しやすい技術者たち 伊丹 敬之、宮永 博史

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 技術者が陥りがちな思い込みは三つある。

 その筆頭にくるのが、技術がよければ売れるという思い込みだ。こういわれて、そんなことはない、技術がよければ売れるはずだと思う読者は、おそらく研究所から一歩も外に出たことのない生粋の技術者であろう。逆に、その通りだと頷く読者は、開発した技術をもとに製品を売り込もうとして売れずに苦労した苦い経験のある技術者か、技術開発に直接タッチしない傍目八目的な営業担当者にちがいない。

 技術者がこう思い込むのも無理はない。なぜなら若いときからそのように育てられてきたからだ。イノベーションを興そうとする技術者たちは、世界初の技術や世界一の性能を達成しようと日夜仕事に励んでいる。何を今さらそんなことを言い出すのかと思うことだろう。

 こう思い込む技術者は、自分たちが開発している技術が全体の一部にすぎないことを忘れている。技術者の多くは、大学の理系の学部または大学院で教育を受けている。そこでの研究は、先輩たちから引き継いだ研究の一部であることが多い。最初から世界が狭い。もちろん、狭いことが必ずしも悪いことではない。狭いからこそ、世界一になりうるという側面もある。しかし、最初からテーマが与えられると、なぜそのテーマが必要なのかを考える訓練がなされないまま卒業することになる。

 企業に入っても同じだ。若手技術者に与えられる技術開発は全体の一部である。だから、どうしても狭い分野に思考が限定される。担当する分野で最高性能を出すことを目指して一心不乱に技術開発するのだから、(自分が開発している)技術さえよければ売れるはずだと思い込むのも無理はない。

 実は、こうした思い込みは若手技術者ばかりではない。技術系のマネージャーにもそうした思い込みから逃れられない人は多い。技術をベースに起業したベンチャーの経営者ですらこの思い込みで失敗する。

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