技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

思い入れと思い込みを混同しやすい技術者たち 伊丹 敬之、宮永 博史

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思い込みを正すために

 こうした思い込みはなぜ起こるのか。たとえば、技術がよければ売れるという思い込みは、なぜ起こるのであろうか。顧客の立場に立ってみれば、そこは違うとすぐに気づく。そう思えないのは、顧客の立場に立てていないからだ。競合他社は進歩しないという思い込みも、自分たちのことしか考えていない証拠である。競合他社の立場に立てば、すぐにわかることだ。やはり視野が狭いのである。三つめの、井の中の蛙は言わずもがなだ。思い込みを正すためには、視野を広げる努力を技術者本人も周囲もしなくてはならない。

 いやいや、実際に顧客に聞いています、という反論もあろう。ところが、顧客に聞くということと顧客の立場に立つということの間には違いがある。技術者が接する顧客が技術者である場合、相手の視野も狭く、真の顧客とはいえない場合も多い。顧客の言葉だからと金科玉条にして開発に走ると、とんでもないことになる。これを防ぐには、顧客企業の他部署にもコンタクトしたり、同時に複数の企業にコンタクトするなど、情報収集源を広げて複眼を持つ必要がある。ある顧客が述べた考えをもとに仮説を構築し、他の顧客にぶつけてみる。すると、今まで気づかなかった視点に気づかせてくれる。次第に、どの顧客が言っていることがもっともらしいか、判断できる材料が蓄積されてくる。そうなれば、顧客の声に振り回されず、独りよがりの思い込みでもない、確かな仮説を構築できる。

 思い込みに陥る企業は、たいてい一社としかつきあわない。とても複数の顧客を相手にする余裕などありません、それでは技術者が死んでしまいますという。

 それは、複数の顧客とのインターフェースを持つ目的を誤解している。コンタクトした顧客から言われたことをすべて開発していたら、いくら技術者がいても足りない。そうではなく、思い込みを正すことが目的なのである。開発した製品が顧客の要望通りではないかもしれない。しかし、そのほうが、顧客にとって価値のあるものであれば受け入れられるはずだ。

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