技術を武器にする経営 日本企業に必要なMOTとは何か

「技術の神話」で思考停止する日本企業 伊丹 敬之、宮永 博史

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スイスになれなかった日本

 信州の諏訪地方を「日本のスイス」と呼んだ時期が半世紀ほど前にあったことを、知っている読者がどのくらいいるだろうか。

 理由は二つあった。一つは諏訪からは日本アルプスも八ヶ岳連峰も近く、諏訪湖という大きな湖水もある。風景としてスイスに似ているというのである。もう一つの理由は、諏訪地方が時計の一大生産地だったことである。スイスが精密な機械式腕時計の世界の中心であったから、その後を追うという意味で、「日本のスイス」なのである。

 その諏訪地方で、世界初の市販用クォーツ腕時計が開発されたのは、1969年のことであった。セイコーのアストロンというモデルであった。その後、セイコーは特許を公開し、時計の世界は機械式からクォーツ式に雪崩を打って変わっていった。その雪崩を日本企業が主導し、スイスの時計産業は窮地に立たされていった。

 それから半世紀近くが経った2014年の今、スイスの腕時計は高級装飾品として見事に甦った。数十万円、数百万円するような高級時計では、スイスの独壇場である。またスウォッチなどのデザイン性の高い低価格ブランドでも、スイスは世界的に大きな存在となっている。しかし、技術的には世界をリードしたはずの日本の腕時計産業は、東アジアの時計産業に追い上げられて弱体化してしまった。

 日本はなぜ、スイスになれなかったのか。

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