取締役の法律知識

コーポレート・ガバナンスと会社の仕組み 中島 茂

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(1)コーポレート・ガバナンスの必要性

 「コーポレート・ガバナンス」とは、会社が健全に活動を続けるようにコントロールするための努力をいいます。株式会社は私たちの社会を支える不可欠のビジネス・システムです。ところが、株主は出資以上の責任を負いませんし、運営している取締役なども対第三者責任が生じる場合は別として、外部に対しては責任を負いません。また、株式が転々と譲渡されると株主のほうも「自分たちの会社」という意識が薄れてきます。そのため、株式会社を舞台とする企業不祥事が後を絶たないのです。製品の欠陥隠し、データ改竄、入札談合、カルテル、不法勢力への利益供与、偽装表示、粉飾決算と、近年に起きた企業事件だけを考えても枚挙にいとまがありません。

 企業不祥事が発生した会社は法的責任追及や社会的糾弾を受け、株価は下落し、売り上げ実績も低下し、果ては倒産という事態にまで発展します。こうした事態は株主だけではなく、消費者、取引先、社会一般にとっても大変に深刻なことであり、絶対に避けなければなりません。特に欠陥商品事故、環境汚染問題などが起きると、消費者や社会が直接に被害を受けます。そこで、会社の活動を健全に保つようにいかにコントロールするかが、いま会社に関する最大の話題になっているのです。

(2)コーポレート・ガバナンスの方向性

(1)株主主権の再確認

 会社の活動を健全に保つための努力は、どのようにしたらよいのでしょうか。私は、何よりも、「株主主権の原則」を再確認することだと思います。前述したように、多くの企業不祥事は執行機関が株主を軽視して暴走するところから起きているからです。極端なたとえですが、執行機関が株主に、ある欠陥製品のシリアスな事故態様など、すべての事情をディスクローズして、「この製品の欠陥を隠してでも販売を継続すべきでしょうか?」と聞いたとしたら、「それでも販売を継続しろ」という株主がいるでしょうか?そうした株主は皆無のはずです。それなのに企業不祥事が起きるのは、株主との意思疎通手段が「株主総会」しかなく、その株主総会ですらこれまでは形骸化していたからなのです。

 そう考えると、会社の運営に携わるすべての人や組織が自分たちの仕事を進める際に、「主権者である株主の意向はどうか?」と常に考える「姿勢」を持つことこそが、コーポレート・ガバナンス確立への第一歩になるはずです。

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