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情報武装した「スマートシニア」に売り手はどう対応すべきか 村田 裕之

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 ごまかしが利かなくなった業界の代表は、有料老人ホーム業界です。2006年くらいまで、ある老人ホームの運営会社が日本経済新聞に全面広告を出し、高級ホテルに600名程度を集めて昼食付きの無料説明会を開いていました。内容は「第1部・日野原先生のご講演」「第2部・オーケストラ演奏」「第3部・ビデオによるご説明」といった具合です。こうした広告を出すと、当時は広告掲載後2日で1300名程度はすぐ集まりました。

 説明会当日、第3部が終わると机上にアンケート用紙が置いてあり、参加者600人中、50人程度が「ぜひここに入りたい」という意向を示したものです。そして、その後の営業フォローで実際に大勢が入居を決定しました。当時、その老人ホームの入居一時金は、平均5000万円程度でした。

 さあ、今はどうでしょうか? 今でも日本経済新聞に全面広告を同様に出せば、参加者は集まります。しかし、同じようなプログラムをやり、アンケート用紙を用意しても、「ぜひここに入りたい」という意向を示す人は、残念ながらほとんどいないでしょう。たとえ、入居一時金が2000万円でも、説明会での参加者の反応はほぼ同じでしょう。昔に比べて高額な老人ホームが売れにくくなったのです。

情報武装したシニアは消費行動が変わっていく

 なぜ、昔に比べて高額な有料老人ホームが売れにくくなったのでしょうか? その理由は、多くのシニア顧客が情報武装して賢くなったからです。その結果、購入前に多くの情報を手に入れて、じっくり吟味するようになり、衝動買いをしなくなったのです。

 私が知っているある方は、老人ホームのパンフレットをコレクションしていました。2年半で50件くらいの体験入居をしたそうです。この方は体験入居ばかりで入居はしないのです。将来に備えて情報を収集しているだけなのです。

 別の方は、体験入居する時に、必ずデジタルカメラを持参します。それでホームの内装を写真に撮るだけではありません。夜中の1時過ぎに自室の緊急ボタンを押して、スタッフが何人、何秒で駆けつけてくるかを写真に撮っているのです。

 なぜ、写真を撮るのかというと、大金を払って入居するのだから、いざという時に、それなりの態勢で自分を守ってくれるのかどうかを確認したいわけです。一方、ホームの運営会社からすると、これは相当嫌な客です。

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