営業改革、失敗の法則――そんな営業部ではダメになる

元スーパー営業の成功体験と言い訳が営業改革のブレーキになる 藤本 篤志氏

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名選手が名監督になれない理由

 営業改革ができない理由は、まだまだある。

 営業部門のヒーロー的な活躍をした人が、営業改革のブレーキを踏むことがよくある。これは、「名選手、名監督ならず」という言葉が、端的にその理由を表現しているのではないだろうか。

 まず、ヒーロー的な活躍をした人が、営業部門のトップの場合を考えてみよう。順当に出世すれば、このパターンになる営業組織は多い。元ヒーローが営業部門のトップとなり業績も順調であれば、そもそも営業改革の必要性はないので問題はない。問題になるのは、元ヒーローが率いる営業組織の業績が低迷した場合だ。社長が低迷する業績をみかねて営業改革の指示を出す。ところが、元ヒーローは大抵の場合、自分のマネジメントが原因であるということをなかなか認めようとしない。認めることができる人は、業績低迷が長引く前に、先輩たちに教えを請うか、マネジメントに長けた人を参謀にすることで、自分色を消した営業改革を既に取り組んでいるはずだ。

 以上の理由から、元ヒーローは業績低迷の原因を自分のマネジメントではなく営業プレーヤーに置いてしまう。「なぜ1分1秒を惜しんでもっと動けないんだ!」、「俺が現役のころは寝る時間を惜しんででも営業しまくったぞ」、「なぜ状況に応じて頭を使わないんだ!」と考えてしまうのだ。ヒーローになるぐらいの人だから、営業量が半端じゃなく多かったり、営業能力が半端じゃなく突出していたりするのだが、部下にも自分と同じことを求めてしまう。そして、自分の成功体験を熱心に教えたりする。「自分はこのように営業してきた。なぜ、できないんだ!」と指導する元ヒーローに悪気はない。

 しかし、そのようなマネジメントでは、いつまでたっても営業改革は成功しない。このようなズレが生じる理由は、名選手は凡選手のことが理解できないところにある。大半の部下は、「名選手のように動けない」、「名選手のように頭が回らない」という現実に気付かない。それは自分の能力を謙虚に考えているからではなく、「気合が足らない」、「本気になってない」という類の努力不足、もしくは不真面目な仕事態度に原因があると考えてしまうからだ。

 営業マネジメントの要諦は、凡選手でも成績が上がる汎用的なノウハウを整理し全員に共有化させることにある。これは、かなり重要なことだ。そして、ここで気付かなければならないことは、「凡選手でも成績が上がるノウハウ」と「名選手のノウハウ」は、そのほとんどが相容れないものであるということだ。凡選手に、自分の成功体験である「名選手のノウハウ」をいくら教えても、いくら実行させても、身体や頭が付いてこないのは当たり前なのだ。非力な選手にホームランの打ち方ばかり教えているようなものだ。

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