孫子に経営を読む

論理的積み上げの大小が企業の未来を決める 伊丹 敬之氏

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「算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るを況(いわ)んや算なきに於(お)いてをや」

「多算勝、少算不勝、而況於無算乎」 計篇(第一)金谷治訳注『新訂 孫子』岩波書店、33頁

 「算」の意味として、白川静博士の『字通』(平凡社)では、「数える」ことと「はかりごと」の二つを最初にあげている。もともとは算とは数える、計算するという意味であったのであろうが、計算すれば、その計算にもとづいて人間は計画を立てるようになる。つまり、はかりごとをめぐらすことになる、ということであろう。

 ここに引用した文章は、計篇(第一)の結語ともいうべき位置づけのものだが、ここでも算という漢字は、こうした二つの意味で使われていると解釈すべきだろう。

 算の対象となるのは、たとえば前回で説明したような、道を第一とする国防の五つの基本要因であろう。それらの要因について、敵軍と自軍の比較をきちんとして、その上で対策としてのはかりごとをめぐらすことが多ければ、戦さに勝つ可能性は高い。孫子がいいたいのは、そういうことであろう。

 そうした計算と論理的組み立てが算の内容だが、その質と量がともに大きければ、戦さに勝てる。それが小さければ戦さには勝てない。ましてや、算なき場合には、勝てるはずがない、というのがこの節で引いた孫子の言葉の意味である。

 しかもその「算」とは、「戦さに入る前」の「廟算(びょうさん)」だ、と孫子はいう。ここで引いた「算多きは勝ち、......」という文章の前に、こう述べている。

「未だ戦わずして廟算して勝つ者は、算を得ること多ければなり」

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